著者
山崎 英文 北村 慎一 長尾 正一 平田 哲也 本田 幸治 片山 知之
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.699-704, 1987-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
22

血清亜鉛(Zn)の急性心筋梗塞(AMI)における意義を知る目的で,特に重症度・合併症・予後などとの関係を検討した.方法: 発症24時間以内のAMI 31例で,Zn・酵素の採血を経時的に行った.Znは原子吸光分析法で測定した(正常値61~121μg/dl).結果:Znは肺炎・腎不全を合併した2例を除く29例中25例で発症後低下し,第2病日(45.4±14.7)~第3病日(43.8±12.8)に最低となり,6病日に正常化した.24時間以内死亡の4例を除いた25例で以下の検討を行った.梗塞部位,年齢でZn最低値(Zn値)に有意差はなかった.Zn値はCPK最高値(r=-0.481, P<0.05),LDH最高値(r=-0.521,p<0.01)と負の相関を認めた.重症度との関係では,Killip I・II群(45.6±12.0)に比し,III・IV群(32.9±4.1)でZn値は有意に(p<0.01)低かった.Lown不整脈分類 0~3群(44.7±12.7)に比し4・5群(37.2±9.1)でZn値は低い傾向を示した.心エコー法による左室壁運動の初回発作例19例の検討では,Zn値はakinesia・dyskinesia君羊(34.3±7.3)がhypokinesia・正常群(46.8±11.8)より有意に(p<0.05)低かった.AMI以外でも肺癌,肝硬変などでZnが低下する例があった.開腹手術では術後1・2日に低値を示し,3日目に正常化しAMIとはやや異なった推移を示した.結論:AMI経過中のZnの推移は,その診断上有用であるのみならず,重症度・合併症・予後などの判定に参考になると考えられた.