著者
東海林 正弘 平谷 和幸 小山内 信 張 立也 朴 鑽欽 刀塚 俊起 横澤 隆子
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【緒言】丹参を主薬とする冠元顆粒は、国内で開発された生薬製剤で、第2類医薬品に分類されている。我々は、冠元顆粒並びに構成生薬の活血化瘀作用に注目し、糖尿病性腎症の進行に対する治療効果を検討しているが、本報では2期、並びに3期の患者に対する治療効果を検討した。【方法】真生会富山病院糖尿病センターの外来を受診し、漢方治療を希望した糖尿病性腎症患者 (2期3症例、3期2症例) に、冠元顆粒 (丹参、芍薬、川芎、紅花、木香、香附子からなる漢方方剤) を1日3包7.5 gを6ヶ月間連日経口投与した。なお、従来より服用している内服薬及び注射剤は継続投与した。【結果】いずれの患者も、自覚症状として肩こり、頭痛、手足の冷え、疲労感、胃・腹部の張り、腰や身体の痛み・痺れ等を訴えていたが、投与2ヶ月から問診票スコアの著しい改善が認められ、身体が楽になった、軽くなった、疲労感が改善された等の変化を示した。生化学的所見では、血清クレアチニン (Cr) がいずれの症例においても低下し、特に推算糸球体濾過値 (eGFR) は冠元顆粒投与6ヶ月前から低下していたが、投与6ヶ月の時点で有意に上昇していた。また2期患者において、尿蛋白、尿アルブミンの改善が見られ、投与5ヶ月以降は正常レベルを示した症例も見られ、中にはHbA1cの低下、収縮期と拡張期血圧が低下する症例も見られた。【結論】冠元顆粒を服用した糖尿病性腎症2期、並びに3期の患者5例において、自覚症状と腎機能 (eGFR、血清Cr) の改善が認められた。