著者
平野 孝治
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-73, 2008-11-30

日本で発表された中国メディア研究について,政治コミュニケーションの視座から分析を行い,その傾向と問題点を明らかにした。マスメディアと政治制度,イデオロギー,中央と地方の関係,情報発信の過程をテーマに周囲から内部へと段階を追って考察を試みた。また近年注目されるインターネット研究にも考察を試みた。その結果思想改革を目的とした報道機関の発する情報は,教育的なものであることが明らかになった。しかし,これは政権側の情報統制によって思想改革が成功するであろうという希望であって,実際に成功したかどうかは明らかになっていない。また,中央と地方の枠組みでメディア研究を行なう際には,地政学的,政治経済学的な視座で考察を行わなければならない点を明らかにした。そして,マスメディアと政府の関係が,今まで既存メディアが経済や政治的な要因によって変化が生じていたのとは異なり,インターネットの出現によって,政治エリートとマスメディアの関係が根本的に覆され,お互いの利益のために利用しあう関係へと変化したこと,インターネットの内容に左右される政府という新たな状況が形成されている点を明らかにした。