著者
広松 聖夫 井上 明生 木下 斎 境野 昌範 諌山 照刀 奥野 徹子
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.436-445, 2013-09-25
参考文献数
16

「はじめに」変形性股関節症の進行・末期例に対するキアリ骨盤骨切り術においては,術後に関節裂隙の開大が得られないことがある.我々はこのような症例に対してはJiggling(股関節を貧乏ゆすり様に小刻みに動かす運動)を指導している.今回この効果について検討した.「方法」対象は2000年より当院で手術した385股のうち術直後に関節裂隙の開大が見られないか,もしくは経過中に関節裂隙の狭小化が生じた症例92股であり,これらの症例に対し頻回のJigglingを指導した.その結果65股(70%)の症例でX線上関節裂隙の開大を認めた.「考察」関節軟骨修復再生の促進については古くはSalterのCPMの実験が有名であるが,Haradaらはラットの尾骨切断面に機械的摩擦刺激を加えることで硝子様軟骨が生じたことを報告している.変股症の治療成績向上のためには関節構造の改造だけでなく軟骨修復再生の促進という新しい視点も必要であると考える.
著者
広松 聖夫 木下 斎 井上 明生
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.389-395, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

[はじめに]変形性股関節症に対する各種温存手術の後,関節症変化が進行してきたときの対応には,いろいろの方法があるが,今回は特にわれわれが保存療法として勧めているジグリング(貧乏ゆすり様運動)の成績を検討した.[対象と方法]温存手術の後,関節症変化がいったんは良くなったものの再び悪化してきた症例,および術後3年以上たっても改善してこない症例を対象に,一日2時間以上のジグリングを指導し,6か月ごとに追跡し,関節裂隙の開大とともに症状,主としてJOA score疼痛点の改善で評価した.[結果]対象になったのはキアリ手術術後29関節,寛骨臼回転骨切り術後4関節,棚形成術術後3関節の合計36関節で,そのうち著明に改善したのは17関節47%であった.[結語]変形性股関節症に対するキアリ手術の成績向上のために考案したジグリングは,温存手術の成績不良例にも試しみる価値のある治療手段であることがわかった.