著者
広瀬 敏夫
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.87-94, 1974-03

岩手県下における天然産エゾアワビの計測を通じて次のような結果を得た。1. 同一地域の相接する漁場で著しい成長の差が認められ,漁獲制限殻長9cmに達する平均所要年数は,最高10年,最低4年であった。2. 成長の好悪両漁場の成因として,餌料海藻の質と量に負うところが大きい。3. 全重量に対する肉重量の比は成長のよい漁場で高率であるが,殻重量の比では逆の関係が成立する。4. 貝殻は成長のよい漁場でやゝ丸味を帯びる傾向がある。5. 年間の殻成長量は,発生後満1年から3年までの間に最も大きい。その前後は漸減する。6. 大型有用海藻の生産量(生育量)とアワビの成長量とは単年度量及び累積量共に極めて深い関係が存在する。特にそれは発生後満2年から4年の間で最も顕著に影響する。然し,発生後満1年までの成長とは殆んど無関係であるとした。7. 同一環境内のアワビ個体群は,発生後2年または3年の初期成長の間に生じた殻長の差は,後期成長によって補償される結果年令と共に次第に縮少する。