著者
北川 大二 石戸 芳男 奥山 勇作 桜井 泰憲 稲田 伊史
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p59-66, 1992-02

岩手県沿岸の大槌湾沖の人工魚礁,天然礁および砂泥域の3調査点において,1987年5月から1990年3月の間に合計18回,三枚網による調査を行った。採集されたエゾイソアイナメの胃内容物を調べた結果,マイワシとカタクチイワシの頭が摂餌されていた。これらの頭の切断面は,飼育下のスルメイカがマイワシやカタクチイワシを捕食する際に捨てた頭とよく似ており,エゾイソアイナメがスルメイカの捨てた餌を摂餌することが推定された。マイワシあるいはカタクチイワシの頭は主として7,9,11月に摂餌され,3調査点のうちでは人工魚礁において摂餌個体数,摂餌量ともに最も多かった。エゾイソアイナメが捕食していたマイワシとカタクチイワシの頭長からの逆算では,カタクチイワシの体長は101~129mm,マイワシは140~214mmであった。このことから,スルメイカが体長100mm以上の魚を捕食するときにはその頭を捨てる可能性があると考えられた。
著者
石戸 芳男
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.52, pp.p33-43, 1990-03
被引用文献数
2

東北海区北部におけるヒラメ若齢魚の標識放流結果から次のことが明らかになった。1) 八戸・泊海域と宮古海域で1982年9月から1987年10月までに1019尾を放流した。1988年10月31日までに182尾が再捕され,再捕率は17.9%であった。2) 八戸・泊海域で放流したヒラメは南北に移動したが,主に津軽海峡まで北上し,さらに1尾は日本海を南下し富山県黒部川河口まで達した。宮古海域で放流したものも八戸沿岸まで北上するものが多く,南下は大部分山田湾付近までであった。3) 以上のことから,東北海区北部のヒラメは津軽海峡を通じて日本海側のものと交流していることが推測される。4) 放流から再捕までの経過日数は最大672日であったが,20日以内が61%,50日以内では81%を占め短期再捕が多かった。5) 移動速度は経過日数50日頃までに50~60kmを移動しているものが多かったが,4日間で77km移動した個体もあり,若齢魚でも短期間に長距離を移動することが推定される。
著者
広瀬 敏夫
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.87-94, 1974-03

岩手県下における天然産エゾアワビの計測を通じて次のような結果を得た。1. 同一地域の相接する漁場で著しい成長の差が認められ,漁獲制限殻長9cmに達する平均所要年数は,最高10年,最低4年であった。2. 成長の好悪両漁場の成因として,餌料海藻の質と量に負うところが大きい。3. 全重量に対する肉重量の比は成長のよい漁場で高率であるが,殻重量の比では逆の関係が成立する。4. 貝殻は成長のよい漁場でやゝ丸味を帯びる傾向がある。5. 年間の殻成長量は,発生後満1年から3年までの間に最も大きい。その前後は漸減する。6. 大型有用海藻の生産量(生育量)とアワビの成長量とは単年度量及び累積量共に極めて深い関係が存在する。特にそれは発生後満2年から4年の間で最も顕著に影響する。然し,発生後満1年までの成長とは殆んど無関係であるとした。7. 同一環境内のアワビ個体群は,発生後2年または3年の初期成長の間に生じた殻長の差は,後期成長によって補償される結果年令と共に次第に縮少する。
著者
関 哲夫 菅野 尚
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.p29-36, 1981-10
被引用文献数
4

エゾアワビ被面子幼生は底棲生活に移行する際に,エゾアワビ,クロアワビ,マダカアワビ,及びメガイアワビの足蹠より分泌されるmucous trailを選択して着底し,ブドウガイ,イシダタミ,エゾチグサガイ等のmucous trailには着底しない。エゾアワビ足蹠より分泌される粘液状物質のうち,人為的な刺激を受けて分泌されたものや足蹠面を基質上にこすりつけて採取した粘液には幼生は着底せず,摂餌あるいは匍匐の間に分泌されたmucous trailに着底する。アワビ属のmucous trailは,アワビ被面子幼生がこれに接触して,属特異的に着底を誘起させる機能を有している。
著者
吉田 忠生
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.89-94, 1972-03

1964年秋に松島湾漁場で行なったノリ養殖試験の際,ひび糸上でのノリの着生密度と収量の関係を調べた。生育初期には高密度のひびで収量が多かったが,葉体長の伸長が止まり,収量が最大になる頃には,ひび糸10cm当りの着生密度400から2,000の範囲で収量は密度に関係なくひび糸10cm当り約2gとなった。このことは吉良(1960)が陸上植物について見出した"最終収量一定の法則"がここでも成立することを示している。
著者
手島 和之 山本 道代 垣谷 正幸
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.64, pp.37-41, 2001-03

平成4(1992)年3月に瀬戸内海でサメによる人身事故が発生して以来,サメ類に対する関心が急速に高まった。このような事故を未然に回避する目的で,サメ類の情報を収集し,公開するための連絡網が直ちに設立された。今回,平成4(1992)年~平成10(1998)年にかけて収集された情報に基づいて,瀬戸内海に出現したサメ類について,若干の検討を行った。1) この期間中に,捕獲され,同定されたサメ類は68個体で,7科9属13種であった。2) これらのサメ類の内,メジロザメ類(50%),シュモクザメ類(20%)及びホホジロザメ(9%)が多く出現した。3) サメ類の個体数の変動と,餌となる小型浮魚類や表面水温の変動との間には,相関関係は認められなかった。4) 大型のサメ類は,瀬戸内海を回遊経路の一部として利用した傾向にあると考えられた。