- 著者
-
横須賀 稔
本多 元陽
田崎 博也
谷本 康信
庄司 佑
- 出版者
- Japan Surgical Association
- 雑誌
- 日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.8, pp.983-989, 1982-08-25 (Released:2009-02-10)
- 参考文献数
- 28
熱傷により皮膚の保護機能が破壊されると体液の喪失と細菌感染によって生命の危険を伴うこともあり,さらに激しい落痛が加わってくる.治療法としてはII度の熱傷は感染を予防し自然の治癒にまかせ,またIII度の熱傷は焼痂を切除して自家植皮を行うことである.そこで異種植皮である凍結乾燥豚皮(lyophilized porcine skin以下LPSと略す)を一時的生体包帯(temporary biological dressing)としてII度の熱傷に水疱を除去した後に貼付し, III度の熱傷には焼痂切除後の肉芽創に貼付する方法が行われている.これによって鎮痛効果,浸出液抑制効果,感染防止効果,処置簡易効果が期待出来る. LPSは滅菌され,パックされているので必要な時に十分な量を手に入れることが出来る. LPSの使用法は生理食塩水に約30分浸して軟らかくし,水疱は出来るだけ除去した熱傷創に豚皮の真皮面を密着させて用いる.貼付したLPSの上に厚い滅菌ガーゼを当てて弾性包帯を巻いて密着させるが, LPSはよく密着しなければ効果が少ないので比較的大きなサイズを使ってずれないように貼付した.症例は1979年10月から1980年12月までに小山市民病院外科に来院した患者で, II度の熱傷創にLPSを貼付し平均日数は9.2日であった.貼付した症例の20%に感染が認められたが著明な鎮痛効果によって毎日のガーゼ交換は容易に行なうことが出来た. LPSはII度熱傷創の一時的生体包帯として有効であった.