著者
北村 征生 庄子 一成
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.67-75, 1985
被引用文献数
1

暖地型マメ科牧草Stylosanthes guianensis cv. Endeavour (スタイロ)とMacroptilium atropurpureum cv. Siratro(サイラトロ)およびイネ科牧草Chloris gayana cv. Boma (ローズグラス)とPanicum maximum cv. Gatton (ギニアグラス)を強酸性土壌(国頭マージ)および微アルカリ性土壌(島尻マージ)に4段階の燐(P)施与量(0,100,200,400,600mgP/Pot)の下でポット栽培し,有効態Pに対する乾物生産およびP吸収特性を比較検討した。P施与に対する各草種の乾物生産およびP吸収反応は,イネ科草ではローズグラスよりギニアグラスで鋭敏に現われたが,マメ科草では明確な草種間差が認められなった。90%以上の相対乾物収量を得るためには,国頭マージの有効態Pをマメ科草で15ppm,ローズグラスで40ppm,ギニアグラスで25ppm以上の水準に保つ必要が認められた。島尻マージでは,これより低い水準の有効態Pで90%以上の相対乾物収量が得られた。各草種の乾物収量およびP吸収量は国頭マージより島尻マージで多くなったが,ギニアグラスはP施与量が多いと両土壌間における乾物収量の差が消失した。これは,吸収したPによるギニアグラスの乾物生産効率が他草種より高いため,国頭マージにおいても島尻マージに劣らない根系の生育を示し,土壌中の有効態Pの吸収量が多くなるためと考えられた。また,サイラトロとくらべて,スタイロの国頭マージにおける生育はP施与量が低い場合良好となったが,これは,スタイロの根が高いP吸収効率を示すことに起因すると考えられた。
著者
庄子 一成 福山 喜一 北村 征生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-31, 1987 (Released:2017-07-07)

南西諸島北部における暖地型マメ科牧草の実用栽培の可能性を検討するために,低温側に生育適温があるグリーンリーフ及びシルバーリーフデスモデューム,クーパー及びチナルーグライシン,サファリクローバと,高温側に生育適温があるサイラトロ,セントロ,エンディバー及びスコフィールドスタイロの9草種それぞれの単播及びローズグラスとの混播栽培を4年間にわたって実施し,草地として定着した試験3・4年次に得られた乾物収量と気象条件との関係を解析した。また窒素収量については,ローズグラス単播に4段階の窒素を施肥した場合の収量と比較検討した。年間合計乾物収量はグリーンリーフ1141kg,シルバーリーフ638kg,クーパー807kg,チナルー844kg,サファリクローバ462kg,サイラトロ895kg及びセントロ649kg/10aであった。この乾物収量と混播におけるマメ科率の推移から判断して,南西諸島北部は低温暖地型マメ科牧草グリーンリーフ,クーパー,チナルー及び高温暖地型マメ科牧草サイラトロの栽培適地であると考えられた。サイラトロの乾物収量が高くなったのは,生育適温域が広く,低温期における生育が良好であったと同時に耐早性に優れており,高温期の生産量が高かったためであった。また,グリーンリーフ,クーパー及びチナルーの高収は適度の降雨がある低温期の乾物生産量が高いことに起因するものであった。サイラトロは常時高い窒素含有率と高い混播効果(窒素移譲量2.2kg/10a)を示し,混播区の年間合計窒素収量は33kg/10aとなった。グリーンリーフは単播区の乾物収量が混播区のマメ科収量よりも高かったため,年間合計窒素収量も単播区が高くなり,31kg/10aとなった。この結果上記2草種の窒素収量は,早魃時には乾物収量が低下するクーパーの混播区(29kg/10a)や窒素含有率の低いチナルーの単播・混播区(24kg/10a)よりも高くなった。