著者
川村 修 福山 喜一 假屋 洋人 弓削 嗣彦 日高 利治 園田 美由紀 新美 光弘 井上 達志
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-5, 1999-07-21

近年、低水分牧草をロールベールとし、ストレッチフィルムで被覆密閉して調製したサイレージを家畜に給与する体系が全国的に急速に普及しつつある。本報では、予乾したイタリアンライグラス(水分60%)を用いて調製したロールベールラップサイレージの発酵品質、飼料成分、調製に伴う成分損失、生産費および家畜生産性について、同時に刈り取ってそのままトレンチサイロに埋蔵して調製したサイレージ(水分90%)と比較した。その結果、発酵品質はロールベールサイレージの方が有意に高かった。細胞壁構成物質(NDF)含量および反芻胃内微生物によるin vitro消化性においては両サイレージで有意な差はなかった。ロールベールサイレージの調製に伴って8%の乾物が損失した。一方トレンチサイロでの乾物損失は29%であった。これを考慮して両サイレージの生産費を試算すると、ロールベールサイレージのほうが乾物1kg当たり23円安かった。未経産雌牛(ホルスタイン種×黒毛和種、14-16ヵ月齢)を用いた飼養試験では、乾物採食量はロールベールサイレージの方が多い傾向を示したが、日増体と飼料効率は同程度であった。日本家畜管理学会誌、35(1) : 1-5,1999 1998年10月30日受付1999年4月9日受理
著者
下条 広介 羽石 敬史 加治佐 誠 Siswandi Riki 中山 緑 小林 郁雄 藤代 剛 福山 喜一 上村 俊一
出版者
宮崎大学農学部
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.115-120, 2007-03

分娩後早期の乳牛に対して、エストロジェンを含むプロジェステロン徐放剤PRIDを膣内挿入することで新たな卵胞波が発生し、PRID除去時には直径10mm以上のクラスIII卵胞の形成がみられた。PRID除去後の定時AIにおいて、E2群1/5頭(20%)、GnRH群5/6頭(83%)が受胎し、最終的な分娩間隔は、E2群429±115.1日、GnRH群346±9.4日となった。PRIDは分娩後の乳牛の卵巣機能賦活に有効であった。
著者
小林 郁雄 福山 喜一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.262-265, 2013
参考文献数
5

常時において,非常時に備えることは難しい。予測をはるかに超える出来事が同時多発的に進行していく非常事態においては,局面での適切な対応を迅速に行うことが困難になり,過去の前例やマニュアルを参考にしたところで,結果として大きな損害を被ってしまうことがある。2010年4月20日,宮崎県都農町の繁殖牛農家で突如発見された口蹄疫は,発生当初における甘い期待を裏切りながら爆発的に被害を拡大させた。宮崎県では,2000年に発生した口蹄疫を最小限の被害で食い止めた実績があり,今回も何とかなるのでは?といった推測があったのは否めない。しかしながら,5月に入ってから感染確認は急速に拡大した。後の調査で明らかになったように,最初に口蹄疫が発見された時点で,すでに近隣家畜密集地帯の農家でも口蹄疫に感染した牛が相当数いたのである。当時は報道も限られ,現場の情報も伝わらずに混乱を招いた。その後の家畜の殺処分も,様々な理由により遅々として進まなかった。5月18日に宮崎県知事による非常事態宣言がなされ,5月21日には発生農家の半径10km以内の全頭に口蹄疫ワクチンを接種して殺処分することが決まった。発生当初から8月27日の口蹄疫終息宣言に至るまでの経緯については,農林水産省のホームページや各種報道,国および県の口蹄疫対策検証委員会報告書等に記載されており,ネット上で簡単に入手できるのでそちらをご覧頂きたい。
著者
庄子 一成 福山 喜一 北村 征生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-31, 1987 (Released:2017-07-07)

南西諸島北部における暖地型マメ科牧草の実用栽培の可能性を検討するために,低温側に生育適温があるグリーンリーフ及びシルバーリーフデスモデューム,クーパー及びチナルーグライシン,サファリクローバと,高温側に生育適温があるサイラトロ,セントロ,エンディバー及びスコフィールドスタイロの9草種それぞれの単播及びローズグラスとの混播栽培を4年間にわたって実施し,草地として定着した試験3・4年次に得られた乾物収量と気象条件との関係を解析した。また窒素収量については,ローズグラス単播に4段階の窒素を施肥した場合の収量と比較検討した。年間合計乾物収量はグリーンリーフ1141kg,シルバーリーフ638kg,クーパー807kg,チナルー844kg,サファリクローバ462kg,サイラトロ895kg及びセントロ649kg/10aであった。この乾物収量と混播におけるマメ科率の推移から判断して,南西諸島北部は低温暖地型マメ科牧草グリーンリーフ,クーパー,チナルー及び高温暖地型マメ科牧草サイラトロの栽培適地であると考えられた。サイラトロの乾物収量が高くなったのは,生育適温域が広く,低温期における生育が良好であったと同時に耐早性に優れており,高温期の生産量が高かったためであった。また,グリーンリーフ,クーパー及びチナルーの高収は適度の降雨がある低温期の乾物生産量が高いことに起因するものであった。サイラトロは常時高い窒素含有率と高い混播効果(窒素移譲量2.2kg/10a)を示し,混播区の年間合計窒素収量は33kg/10aとなった。グリーンリーフは単播区の乾物収量が混播区のマメ科収量よりも高かったため,年間合計窒素収量も単播区が高くなり,31kg/10aとなった。この結果上記2草種の窒素収量は,早魃時には乾物収量が低下するクーパーの混播区(29kg/10a)や窒素含有率の低いチナルーの単播・混播区(24kg/10a)よりも高くなった。