著者
廣安 春華
出版者
日本庭園学会
雑誌
日本庭園学会誌 (ISSN:09194592)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.27, pp.27_29-27_40, 2013 (Released:2018-10-01)
参考文献数
7

平安時代初期に造営された藤原冬嗣の邸宅・閑院は創建当時の姿について不明な点が多い。本研究では、閑院への行幸や餞別の宴の際に詠まれた漢詩を庭園史の観点から整理・分析し、庭園意匠と利用目的を考察した。漢詩には、釣・弾琴・喫茶・詩作などの遊興の様子やそれらに用いる釣殿・薬室(茶室)・花亭といった庭園内の施設が詠まれており、遊興面に配慮した邸宅だったことが明らかになった。閑院は臣下の邸宅であるが故に接遇面に配慮されていたことがうかがえる。また、行幸については、冬嗣と家人に対する叙任等が目的であり、詩宴も天皇と臣下の親密さを確認する目的のもの(密宴)であったと推測できる。
著者
廣安 春華
出版者
日本庭園学会
雑誌
日本庭園学会誌 (ISSN:09194592)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.27, pp.27_13-27_28, 2013 (Released:2018-10-01)
参考文献数
6

冷然院は平安時代初頭に造営された嵯峨天皇の離宮である。庭園は発掘により部分的に明らかになったが、創建当時の姿を知ることは困難である。本研究では、主に嵯峨朝に詠まれた冷然院に関する漢詩を庭園史の観点から整理・分析し、より包括的な考察を目指した。その結果、冷然院では池や瀑布や遣水、釣殿等の水景が多く詠まれていることがわかった。冷然院の庭園は池や築山等の意匠が非常に先端的であったとする先行研究があるが、中でも水景に関しては際立って趣向を凝らした意匠であったことを明らかにした。冷然院が天皇と臣下が親しく交流する詩宴(密宴)の場に用いられたのは、こうした特徴的な庭園を伴っていたことによるものとみられる。