著者
廣津 京一 衛藤 公洋 有馬 徳行 西峯 秀夫
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.92-104, 1999-04-30 (Released:2007-03-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

14C標識塩酸アザセトロソをラットに経口投与して,吸収,分布,代謝および排泄について検討した. 1.塩酸アザセトロンは主として小腸から吸収された.吸収率は,胆管痩ラットにおける胆汁中および尿中放射能排泄率の合計から91%以上と算出された.0.4,2および10mg/kgのいずれの投与群でも,血漿中放射能濃度は投与後0.6時間以内にCmaxを示し,6.7-8.0時間のt1/2Zで消失した.t1/2Zには投与量による差異はなかったが,CmaxおよびAUC0-∞は投与量比以上に増加した. 2.投与後,放射能は速やかに各組織に移行し,ほとんどの組織で投与後1時間に最高濃度を示した.この時点では消化管および膀胱の濃度が高く,ついで,肝臓,下垂体,腎臓,顎下腺,膵臓および肺の濃度が高かった.投与後24時間では多くの組織で放射能濃度が検出限界以下であった. 3.0.4,2および10mg/kgを投与すると,いずれの投与量でも投与後48時間以内に投与量の96%以上が排泄され,体内からの放射能の消失は速やかであった.2mg/kg投与時の投与後96時間では体内に放射能を検出できなかった.胆管痩ラットに投与すると,投与量の増加と共に,尿中放射能排泄率が有意に増加し,胆汁中放射能排泄率は有意に減少した.胆汁中に排泄された放射能の約24%が腸肝循環により再吸収された. 4.尿中および糞中,ならびに胆汁中の代謝物には投与量による質的な差異はなかったが,量的な差異がみられた.胆管痩ラットの尿中にはアザセトロンおよびM1が多く排泄され,胆汁中にはM1およびM3が多く排泄された.10mg/kg投与では,0.4および2mg/kg投与時よりもアザセトロンの尿中排泄率が有意に増加し,主代謝物であるM1およびM3の胆汁中排泄率が有意に減少した.食餌により吸収率は低下したが,代謝の変動はなかった. 5.以上の結果から,14C標識塩酸アザセトロンの非線形動態の原因は,主として,アザセトロンの肝臓での代謝能の飽和であることが示唆される.