著者
西村 祐二郎 廣田 佳子 塩崎 大介 中原 伸幸 板谷 徹丸
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.372-383, 2004-06-15
被引用文献数
5 17

長崎県茂木地域の長崎変成岩類は,茂木スラスト(新称)を介して,ユニットIとIIに区分される.ユニットIはスラスト上盤に相当し,千枚岩から無点紋片岩,変斑れい岩および変花圈岩からなる.ユニットIIはその下盤にあたり,点紋帯の片岩で構成されている.前者はパンペリー石-アクチノ閃石相から緑色片岩相の緑泥石帯に,後者は緑色片岩相の黒雲母帯に相当する.泥質変成岩中の炭質物d_<002>値はユニットIが3.550-3.414Å(broad)を,ユニットIIが3.3619-3.3569Å(sharp)を示し,白雲母K-Ar年代は前者が214-162 Maを,後者が87-86 Maを示す.以上のデータから,茂木スラストは野母半島南西部地域の脇岬-深堀スラストの延長であり,ユニットIが内帯の周防帯に,ユニットIIが外帯の三波川帯にそれぞれ帰属すると結論される.また,茂木スラストと脇岬-深堀スラストを一括して,野母構造線と新称し,古中央構造線に対比する.