著者
建井 順子
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.151-163, 2021 (Released:2021-09-11)

新型コロナウイルス感染症が深刻化するにつれ、経済社会の根幹を支える人々を総称する「エッセンシャル・ワーカー」という用語が多用されるようになった。しかし、なぜそうした定義が存在するのか、また、そうした定義に含まれる人々に何が必要とされているのか、という点において、人々の理解は不十分である。本稿では、米国と英国を参考にしつつ、「エッセンシャル・ワーカー」という定義は何を目的として設けられ、具体的にどの産業に属する誰が該当するのか、またそうした労働者の特徴とは何かを検討する。こうした作業を行うことにより、定義の目的を明確化できると考えるからである。さらにこれにより、他のOECD諸国に比べて国家主導の包括的政策が弱く、各自治体、各医療機関の現場の裁量幅が大きい我が国のコロナ対策への示唆を得る。
著者
建井 順子
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.125-135, 2020 (Released:2020-04-22)

本稿は、内閣府(旧経済企画庁)の『経済白書/経済財政白書』を対象に、そこで使用されるイノベーション概念とその変遷を考察しようとするものである。内閣府のウェブサイト上に掲載されている1954年度(昭和29年度)から2019年度(令和元年度)までの66年間分を対象とし、ウェブサイト上の検索機能を利用し、「イノベーション」の単語を抽出した。そのうえで、「イノベーション」の単語を含む行を抜き出し、独自の一覧表を作成した 。本稿におけるイノベーション概念の分析は、この一覧表にもとづいて実施したものである。その結果、以下の三つを明確にした。第一に、国が捉えるイノベーションは、比較的最近まで「技術革新」のことであった。第二に、当初は概ね組織レベルのイノベーションに焦点が当てられていたが、近年は個人によるイノベーションの重要性へと焦点が移っている。第三に、従来の日本型イノベーション・システムは、産業構造の変化に対応できなくなっており、再構築が必要なシステムとして認識されている。