- 著者
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建井 順子
- 出版者
- 学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
- 雑誌
- 山陽論叢 (ISSN:13410350)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.125-135, 2020 (Released:2020-04-22)
本稿は、内閣府(旧経済企画庁)の『経済白書/経済財政白書』を対象に、そこで使用されるイノベーション概念とその変遷を考察しようとするものである。内閣府のウェブサイト上に掲載されている1954年度(昭和29年度)から2019年度(令和元年度)までの66年間分を対象とし、ウェブサイト上の検索機能を利用し、「イノベーション」の単語を抽出した。そのうえで、「イノベーション」の単語を含む行を抜き出し、独自の一覧表を作成した 。本稿におけるイノベーション概念の分析は、この一覧表にもとづいて実施したものである。その結果、以下の三つを明確にした。第一に、国が捉えるイノベーションは、比較的最近まで「技術革新」のことであった。第二に、当初は概ね組織レベルのイノベーションに焦点が当てられていたが、近年は個人によるイノベーションの重要性へと焦点が移っている。第三に、従来の日本型イノベーション・システムは、産業構造の変化に対応できなくなっており、再構築が必要なシステムとして認識されている。