- 著者
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弘田 潤
紙谷 智彦
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.4, pp.313-320, 1993-07-01
- 被引用文献数
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9
新潟県上川村の30%択伐施業後数年が経過したブナ天然林において, 残存母樹の密度が異なる四つのプロットを設置し, 豊作年における母樹の結実と堅果散布について調査した。保残された母樹の樹冠の大きさや分布は一様でなく, 林冠の疎開は必ずしも結実促進に結び付いていなかった。各プロットの落下堅果の充実率は60.9〜68.7%で著しい差はなかった。一方, 1m^2当りの落下堅果量は多い方から437個(母樹密度147本/ha), 345個(同53本/ha), 302個(同104本/ha), 53個(同21本/ha)で, プロット間で著しい差があった。また, プロット内での落下堅果量の分布には大きなばらつきがあった。最も落下堅果量が少なかったプロットでは, 1m^2当りの落下充実堅果数が10個未満の場所が多く, 翌年発生した実生も更新に必要な量に達していなかった。以上の結果から, 大面積を更新の対象とする現行の天然更新施業において更新を成功させるためには, ha当り50本以上の母樹を適正に配置することが必要といえた。