著者
張 忠峰
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人文・社会 (ISSN:13433946)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.119-126, 2006-12-25

普段の生活の中で、<明日のこと>に関して、日本人は、なぜ「明日は日曜日です」と言うのに、同じ<明日のこと>でも、「明日は雨です」とはあまりに言わず、むしろ、「明日は雨じゃないかな」、「明日は雨かもしれない」、「あしたは雨ですって」といった言い方をよくするのか。実は、これは日本人の思惟方式と密接な関係があると思われる。本論では、かの有名なアメリカの人類学者Ruth Benedictの名作『菊と刀』と関連させて、日本人の思惟方式の形成について述べるとともに、その特殊性を浮き彫りにしながら、それが日本語の表現に如何に影響を与えたか、ということについて、日本語の肯定文を中心に説明する。本論の目的は、より日本語らしい日本語を身につけるためには、日本語の背後に存在する日本人の思惟方式を理解することが、中国人日本語学習者にとって、如何に重要であるか、ということを再提起するところにある。