著者
奥村 萬亀子
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-69, 1977-11-30

時代の変革期に際し, その先がけとして現われるものに風俗の現象がある。歴史を振り返る時, "ばさら"と"かぶき"はその顕著な例である。いずれも変革期における反逆性を精神的基調とする。本稿では"ばさら"について述べる。"ばさら"は, 主として舞や楽を評するのに使われる"ばさ"を語源とし, 正統なる調子から逸脱したところに表われるある種の美的状況を示すものである。こうした表現は当然のことながら, 正統なる世界の枠外のものによって担われているものであった。これが一時代の風俗を示す語となるには, "ばさらぶり"の担い手たちを先導とする経過がある。ここに展開される服飾の様相は伝統的な服飾美からは逸脱した, 異質の主張をもったものである。
著者
森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.51-65, 2004-12-25

台湾植民地征服戦争に1895年から1903年まで参加した憲兵の日誌を紹介する。内容は主に,台湾での自分の任務についてであり、なかでも抗日車との戦闘の様子をくわしく記している。著者の高柳彌平は,憲兵上等兵として台湾に出征し,軍需品輸送警備,抗日車との交戦のほか,現地で台湾語を学んで通訳となり,台湾人の密偵を使って情報収集などをした。勤務地は主に台南であった。現地の環境を考慮せずに持ち込んだ日本車の衣食住の様式は,兵士を苦労させただけでなく,徴用や略奪といった形で現地の住民に被害を及ぼすことになった。著者の台湾人住民に対する行動は,「良民撫育」と「土匪討伐」に二極化しているが,いずれにせよ,相手の人格の無視ないし軽視である。この二つの任務に明け暮れた著者の生活は,その後長く日本に根付く,台湾の人々に対する蔑視を形作る要素となったと考えられる。
著者
東 朋美 森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 生命環境学 (ISSN:18826946)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.1-17, 2008-12-25

日常的着物着用者が「なぜ着物を着るのか」ということを調査した結果,それぞれの着用者は,現代の着物の問題点を次のように克服していることを明らかになった。価格と販売方法については呉服店と親しくなることや古着店や骨董市,ネットオークションを利用すること。着付けや手入れのむずかしさについては,同じく呉服店と親しくなることや,近所に洗い張りの専門家を見つけること,着付けや手入れの技術を習得した母や祖母の身近にいること,和裁などを習得して自分で技術を身につけることである。とくに古着を着用する場合には,いつでも利用できるメンテナンスの方法を確保することが必須となる。着物のルールについては,わずらわしいと感じるより,着物特有のしきたりを身につけることで自分を高めようとする意識が見られた。友人のネットワークが日常的な着物の着用と関係していること,着物の「伝統文化価値」が着用者にとって着物の魅力となっていることも明らかになった。
著者
横林 結 森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 生命環境学 (ISSN:18826946)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.9-17, 2009-12-25

アジア太平洋戦争敗戦後の1950年前後の日本において, 洋裁・洋装の普及過程で注目された「直線裁ち」は, 洋服地と洋裁技術のないままに, 「和服」地と和裁の技術をもって洋服を身につける, という困難な課題に対する解決策であった。またそこに西洋の洋服とは違う, 「日本人に合った洋服」が求められることにもなった。本研究では, この時期に, 多くの服飾関係者や一般の人々が, 「日本人にとって洋服とは」という疑問につきあたり, 「和服」と洋服との折衷とも言える「直線裁ち」に活路を見出そうとしていたということ, また, 洋服に「和服」の手法を取り入れるという方向と, 「和服」に洋服の手法を取り入れるという方向との双方向があったことを明らかにした。加えて, 和服がほぼ儀礼服と化した現在と異なり, 1950年前後の時期は, 「日本人にふさわしい衣服」についての議論が活発であり, 「和服」と洋服のあり方や両者の関係についてもとらえ方が流動的であることを明らかにした。
著者
清水 裕子 森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.29-39, 2006-12-25

本研究は,ファッションブランド,メゾン・マルタン・マルジェラについて,ブランド自身はどう考えているのか,雑誌などではどう取り扱われているのか,そして,実際の着用者はどのように見て,着ているのか,この三者の関係性を見ていくものである。調査の結果,メゾンとメディアと着用者の関係については次のことが明らかになった。メゾンは様々なことに挑戦していこうとしており,そこに意味付けをしているのはメディアである。しかし着用者はメディアが作るイメージよりも,服そのものの新しさに驚いたり,楽しんだりして着ているのである。
著者
小沢 修司
出版者
京都府立大学
雑誌
福祉社会研究 (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-11, 2000-06

1980年代以降、戦後「福祉国家」体制の動揺のなかでさまざまな再編、見直し論議が盛んに行われてきている。本稿では、ベーシック・インカム構想を取り上げ、その系譜の説明、類似の提案である負の所得税、参加所得、社会配当との比較検討などを行いつつ、アンチ「福祉国家」の租税=社会保障政策論として、自由主義者から社会主義者、エコロジストやフェミニストなど幅広い立場から多くの関心を集めている根拠を探っている。ベーシック・インカム構想が支持されているのは、人々を性別分業にもとづく核家族モデルから解き放ち、資力調査に伴うステイグマや「失業と貧困の罠」から解き放ち、不安定度が強まる労働賃金への依存から解き放ち、労働の人間化や自主的市民活動の広範な発展に寄与することが期待されているからである。ただ、労働と所得の切り離しの是非、公務労働の役割についてなど今後解明されるべき論点も残されている。
著者
河野 高志
出版者
京都府立大学
雑誌
福祉社会研究 (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.91-105, 2007-03

現在ケアマネジメントは、介護保険サービスの提供方法として知られるようになってきたが、そこにはいくつかの間題が指摘されている。そこで本論文では、ケアマネジメントの登場と発展について、アメリカ・イギリス・日本を比較してみることで、各国のソーシャルワークとケアマネジメントの関係性を考察する。そこから、日本のケアマネジメントの問題はソーシャルワークの視点の欠如に起因していることを指摘する。また、ソーシャルワークの歴史のなかにケアマネジメント的機能があったことを明らかにすることで、ケアマネジメントをソーシャルワークのひとつのアプローチとして位置づける必要性を論じ、さらにソーシャルワークにおけるケアマネジメント・アプローチの基本的枠組みを提案する。そして最後に、ケアマネジメント・アプローチの実践展開に向けた課題と今後の展望をあげ、ソーシャルワークの立場からケアマネジメント研究を行う意味を述べる
著者
松原 聰
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.91-99, 1986-11-15

サイトカイニン活性をもつ多くのプリン誘導体は, 人間の細胞培養において抗腫瘍作用など重要な生理作用を持っていることが知られている。一方, このような物質は種々の食品材料植物に, サイトカイニンあるいはtRNAの微量塩基として含まれていることが報告されている。本研究では, たけのこの煮汁に含まれているサイトカイニンについて, n-ブタノール分画, イオン交換樹脂カラム, セファデクスカラムを用いて分画し, 植物培養細胞の増殖を生物検定として調べた。その結果, たけのこの煮汁には数種のサイトカイニンが含まれていることがわかった。そのうちの水溶性サイトカイニンを, さらにペーパークロマトグラフィー, バリウム沈殿, 酵素分解などによって調べた結果, たけのこの煮汁に含まれている水溶性サイトカイニンはゼアチンのリボチドであると考えられる。煮汁には約20μMのゼアチンリボチドに匹敵する活性が含まれていることがわかった。
著者
吉安 裕
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-162, 1985-11-15

メイガ科ミズメイガ亜科は鱗翅目の中では特異な群で, 大部分の幼虫が水生生活を行う。また, 水田生態系では農業害虫または益虫として注目される種を含んでいる。世界から約700種が知られ, おもに熱帯から亜熱帯にかけて種類が多い。我が国では井上(1982)によってミズメイガ亜科(広義)9属29種が報告されている。本論文は, 日本各地の研究機関所蔵の標本や, 筆者が収集した国内・国外の標本にもとづき, 日本産ミズメイガ亜科(広義)の分類学的再検討を行った結果をとりまとめたものである。その結果, 我が国からミズメイガ亜科9属32種1亜種, シダメイガ亜科3属5種をみとめた。本論文ではこれらの学名を明らかにするとともに, 両亜科及び各亜科内の属や種の定義及び記載を行った。ミズメイガ亜科では1属6種を新たに記録した。そのうち1属は新属, 4種は新種, 2種は日本未記録種である。また, 1新亜属を記載するとともに, 5種について属名と種名の新結合を明らかにした。一方, シダメイガ亜科では, 2新属4新種を明らかにした。これらの2亜科の属, 亜属, 種の識別をするために, 検索表を作成した。また, ミズメイガ亜科に関しては幼虫と蛹の検索表を付し, 応用昆虫学の観点から, 食草の判明したものについては, そのリストを作成した。日本産の種については, できる限り雌雄交尾器, 幼虫, 蛹の形態を図示した。一部外国産の種についても同様な図示を行った。成虫の斑紋については, 従来用いられてきた名称を統一し, 新しい定義を行ったほか, 雄交尾器については新形態用語を提案した。ミズメイガ亜科とシダメイガ亜科との系統的な関連性について, Roesler (1973), KuzunezovとStekolnikov (1979), Speidel (1981)などを参照して考察を行った。その結果, ミズメイガ亜科はオオメイガ亜科と, シダメイガ亜科はヤマメイガ亜科と近縁であることが推定された。
著者
津崎 哲雄
出版者
京都府立大学
雑誌
福祉社会研究 (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-60, 2006-03

19世紀末から1930年代の英国において、救貧法下の救貧委員・地方政治家・下院議員・労働党党首として貧窮者・失業者・労働者の生活向上に尽したジョージ・ランズベリの生涯を鳥瞰し、救貧制度改革・セツルメント運動(および慈善組織協会活動)・非戦平和運動における彼のユニークな貢献を検討する。救貧制度改革ではワークハウス処遇改革・王立救貧法調査委員会少数派報告・ポプラリズムへの貢献、セツルメント運動ではその社会階層性批判、非戦平和では「福祉と平和」のための非戦平和運動に果たした希有な役割、を検討し、英国ソーシャルポリシー・ソーシャルワークの歴史記述に新たな視点を提供している。
著者
張 忠峰
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人文・社会 (ISSN:13433946)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.119-126, 2006-12-25

普段の生活の中で、<明日のこと>に関して、日本人は、なぜ「明日は日曜日です」と言うのに、同じ<明日のこと>でも、「明日は雨です」とはあまりに言わず、むしろ、「明日は雨じゃないかな」、「明日は雨かもしれない」、「あしたは雨ですって」といった言い方をよくするのか。実は、これは日本人の思惟方式と密接な関係があると思われる。本論では、かの有名なアメリカの人類学者Ruth Benedictの名作『菊と刀』と関連させて、日本人の思惟方式の形成について述べるとともに、その特殊性を浮き彫りにしながら、それが日本語の表現に如何に影響を与えたか、ということについて、日本語の肯定文を中心に説明する。本論の目的は、より日本語らしい日本語を身につけるためには、日本語の背後に存在する日本人の思惟方式を理解することが、中国人日本語学習者にとって、如何に重要であるか、ということを再提起するところにある。