著者
張 英信
出版者
ルーテル学院大学
雑誌
ルーテル学院研究紀要 : テオロギア・ディアコニア = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary : theologia - Diakonia (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.47, pp.67-88, 2014-03-01

本研究では,韓国の女性家族介護者が感じている肯定的介護認識の構造を明らかにし,「肯定的介護認識仮説モデル」に基づき同居家族療養制度の利用と非利用による相違を分析した。 質的帰納的研究の結果,家族介護者は【要介護者の受け入れ】の環境に取り組み【介護スキルの向上】を図り,【自己価値の向上】になり【他者への貢献可能性】に至るという経験を通して介護肯定感を得ていた。量的研究で開発した16 項目からなる肯定的介護認識尺度は,確証的因子分析によって4 因子構造となった。そして,「肯定的介護認識仮説モデル」の検証のため,嫁のデータに限定し,共分散構造分析モデルを多母集団で同時分析した結果,同居家族療養制度の利用の有無に関わらず,扶養意識が肯定的介護認識に強く関係し,介護が単に負担感のみを与えるものではなく,家族介護者にとって何からの価値を持っているということが確認された。