著者
張 魯寧
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.68-72, 2013 (Released:2014-01-01)
被引用文献数
1

王子製紙苫小牧工場は北海道の千歳市に5箇所,恵庭市に2箇所,ニセコ町に2箇所計9箇所の水力発電所を保有している。この内,最も古い千歳第1発電所は支笏湖を水源として明治43年苫小牧工場の動力源として運転開始された。その後,工場の拡張に伴い大正5年に第2発電所,大正7年に第3発電所,大正9年に第4発電所,昭和16年に第5発電所が順次下流に建設された。これらの水力発電所群は平成19年に土木学会選奨土木遺産と経済産業省の近代化産業遺産群として認定されている。先人が残した遺産をきめ細かくメンテナンスすることにより,いまなお苫小牧工場のみならず支笏湖畔地域や他社への電力安定供給の一翼を担っているが,設備稼動後70年~100年が経過し老朽化が進んでいる。また,低炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー特別措置法が実施されたことによりCO2フリーの電力への関心も高まっている。当社はこのような社会状況に鑑み,発電事業の一層の強化を図り,電力の安定供給に寄与するため,水力発電所設備の制御駆動装置・入口弁・ガイドベーン(可動羽)・ランナー(羽根車)の更新によるリフレッシュ工事を順次実施する。リフレッシュ工事により,水車効率の回復や保守省力化を図ることが可能で,今後の水力発電所の活用に大いに貢献できると期待される。当社は地球温暖化問題に鑑み,低炭素社会への貢献を目的として,今後もクリーンエネルギーの活用に取り組んでいく。