著者
阿部 隼太 三浦 徹也 彌永 拓也 岡 高史 高瀬 真衣 井石 和磨 土井 篤
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.252, 2016

<p>【目的】</p><p>平成27年度の本学会において、我々は脳卒中片麻痺入院患者に対するペダリング運動施行中の麻痺側前脛骨筋(TA)へのIntegrated Volitional control electrical Stimulator(IVES)療法が、ペダリング単独療法に比べて、歩行速度がより改善されることを報告した。今回、同様の介入プロトコールを用い、外来患者に対して同様の結果が得られるかどうかを検討したので報告する。</p><p>【対象と方法】</p><p>当院の外来リハを利用している脳卒中片麻痺患者で、(1)独歩または杖・装具を使用して10m以上の自力歩行が可能である。(2)発症から6ヵ月以降経過している。(3)研究内容の説明理解が可能である。(4)研究に同意が得られる。という4つの条件を満たす49歳と62歳の男性2名(症例1と2)、69歳の女性1名(症例3)の計3名とした。介入間隔が異なるこれら3症例(症例1:平均介入間隔5.6日、症例2:同11.6日、症例3:同4.5日)に対して、ペダリング運動とIVESを併用した期間(併用期)、ペダリングを単独に使用した期間(単独期)を交互に3日ずつ(1クール)、連続計12日間、通常の理学療法の直前に10分間実施した。ペダリング運動はリカンベント(OG技研 Cateye ergociser EC-3500)を使用した。リカンベントのシート位置は最大下肢伸展位膝屈曲10°以上で、対象者が容易にペダリング操作できる位置とした。運動様式は負荷シフトレバー1に設定し、正回転で任意のペダル回転速度で10分間施行した。電気刺激にはIVESのパワーアシストモードを使用した。介入前後の評価として10m歩行(最速歩行時間、歩数)を2回計測し、即時効果としての歩行速度改善率と歩行速度改善度、1クール単位での歩行速度改善度、10m歩行における歩数の前後比較を分析した。</p><p>【結果】</p><p>歩行速度改善率:症例1において併用期と単独期共に歩行速度の改善率は介入日数の約83%(5回/6回)、症例2と3ではそれぞれ約83%(5回/6回)と100%(6回/6回)であった。10m歩行速度の改善度(即時):症例1では併用期、単独期共に平均0.68秒、症例2ではそれぞれ平均0.21秒と0.77秒、症例3ではそれぞれ平均0.27秒と0.39秒と、併用期よりも単独期のほうが歩行速度に改善があった。10m歩行速度の改善度(1クール単位):症例1では併用期と単独期それぞれ平均1.44秒と0.62秒、症例2ではそれぞれ平均0.28秒と0.47秒、症例3ではそれぞれ平均0.66秒と0.4秒とやや併用期の方が単独期に比べ歩行速度が改善していた。10m歩行における歩数の前後比較:症例1では併用期前後で20.9歩と20.3歩、単独期前後で21.0歩と20.9歩、症例2は併用期前後共に17.3歩、単独期前後で17.6歩と17.4歩、症例3においては併用期前後で18.3歩と18.7歩、単独期前後で18.4歩と18.5歩と、全3症例において併用期と単独期で差が無かった。以上のように、リカンベントにIVESを加えた併用療法はリカンベント単独療法に比し、10m歩行の明らかな改善を示せなかった。</p><p>【考察】</p><p>単独期に比し併用期で効果が見られなかった理由として、入院患者は毎日継続して実施できるが外来患者では介入間隔が空いてしまうためではないかと推察された。</p><p>【結論】</p><p>外来患者3例に対して、低頻度であってもペダリング運動単独の効果は認められたが、ペダリング単独運動に同頻度のIVESを加えても、歩行能力改善効果は変わらなかった。今後外来の症例を増やすと共に、低頻度介入の場合に長期的な介入期間によって併用療法に効果があるのか検討することも必要であろう。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の研究倫理委員会の承認を受け、対象者から書面による同意を取得後に実施した。</p>