著者
彦坂 健児
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マラリア原虫のミトコンドリアは、3つのタンパク質遺伝子(cox1, cox3, cob)および高度に断片化された大サブユニット/小サブユニットリボソームRNA(rRNA)のみが存在するミトコンドリア(mt)DNAをもつ。このmtDNAの機能性については未解明な部分が多いが組換え技術が確立されていないため、解析が進んでいない。本研究課題では、1) mtDNAを欠損したマラリア原虫rho0細胞を作出し、2) 人工的に作製したmtDNAを導入する、ことによりマラリア原虫mtDNAの機能性の解明を目指している。本年度は、1)の小課題に対し、初年度の実験結果を踏まえ、組換えの標的遺伝子および原虫種(Plasmodium berghei、Plasmodium yoelii、Plasmodium chabaudi)の検討を行った。その結果、P. bergheiのゲノムのAP2-G領域を標的とした酵母DHODH遺伝子(yDHODH)の導入に成功した。また、yDHODHが機能しているかどうか確認するために、組換え原虫をマウスに感染させ、抗マラリア原虫薬であるアトバコンの投与実験を行った。その結果、野生型のP. bergheiと比較して、アトバコンへの感受性が低いことが示唆された。現在、この組換え原虫株を用いて、アトバコン投与量の検討を行っている。これに加え、ヒト熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のin vitro培養系を起ちあげ、マウスマラリア原虫と同様のyDHODH組換え方法について検討を行っている。