著者
後藤 優仁 星野 貴行 青山 敦
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual58, no.Abstract, pp.449, 2020 (Released:2020-08-05)

近年,上側頭溝での cross-frequency coupling (CFC) が視聴覚の統合錯覚に関連する現象として注目されている. 理論的には,視覚と聴覚に確度の差があるため,より信頼度の高い感覚によって他方が捕獲される事で説明がされている.しかし,実験的に確認されている上側頭での CFC がこうした感覚統合処理を直接的に担っているのかは不明である. そこで本研究では, 音声の定位方向が視覚情報に引き寄せられる錯覚である腹話術効果に着目し, 上側頭溝近傍への経頭蓋ランダムノイズ刺激 (tRNS) によって当該部位での位相活動に外乱を与え,CFCを乱す事で腹話術効果を阻害する事が可能であるかを検討した. 実験参加者の正面を0度としてモニターを設置し, -30~30度に21個のスピーカーを等間隔で配置した. モニターには口唇動作が映され, 参加者はいずれかのスピーカーから流れる音声に対して音源定位を行った. この際の実際の音源方向と知覚された音源方向との誤差を腹話術効果の指標として tRNS による電気刺激時とシャム刺激時での比較を行った.実験の結果,シャム刺激時では角度の誤差も大きく,腹話術効果が観測されたが, 電気刺激時においては誤差やその分散が小さく錯覚の効果が弱まった.tRNS は位相活動に外乱を与えるため,上側頭溝近傍への tRNSが腹話術効果を阻害したと考えられる.この事から,上側頭溝での CFC が視聴覚の統合処理を直接反映している可能性が高まった.