著者
後藤 富士子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.14-17, 2013 (Released:2017-06-02)

協議離婚は裁判所の手続を経ないが、調停離婚、離婚訴訟提起後の和解離婚および判決離婚は、裁判所の手続による。当事者は、別居など紛争勃発から終局まで、法的手続を抱えながら月日を送る。離婚事件で最も問題なのは、父母の紛争の狭間に置かれた子どものケアである。民法は離婚後単独親権制を採用しているが、離婚前は別居しても共同親権制なのに、共同養育を法的前提として「子の最善の利益」を守ることについて、司法は無策である。単独親権制を前提とした手続では、「どちらが監護親として適格か」という二者択一競争に父母を投げ込んで相対的劣者を子育てから排除する「裁判」がされる。これに対し、共同養育を前提とした手続では、夫婦として紛争状態にある父母が子育てに「どのようにかかわっていけばよいのか」を当事者が調整するのを援助する。前者の「裁判」では、「事実」は定型化されたうえ「法万能主義」が貫徹されるから、科学の出番はない。後者の調整援助の手続こそ、臨床心理、精神医学等々、科学が必要不可欠になるのである。