著者
小西 淳 後藤 彰久 大崎 健一 小出 幹夫
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.155-158, 1989
被引用文献数
24

酵素処理して抗原決定基(テロペプチド)が除去されたアテロコラーゲン(AC)をベースに、AC溶液を37℃で4時間中和処理した線維化アテロコラーゲン(FC)、及びAC溶液を60℃で30分加熱処理した熱変性アテロコラーゲン(HAC)の適宜組合せによるマトリックスに各種の架橋処理を施した材料を作製し、物理的・生化学的及び組織学的に検討した。熱脱水架橋(DHT)を短時間施したFC-HACマトリックスをラットの背部皮下に埋入した結果、埋入3日目では検体は良く膨潤し、早くも線維芽細胞の侵入を認め、1~2週間目では摺曲状の「疑似真皮」様組織を形成したのに対し、FC単独や化学的な架橋を施したマトリックスには初期に好中球やマクロファージなどの炎症性の細胞の浸潤が多く認められた。FC-HACマトリックスは異物反応を励起せぬままそれ自身が真皮に類似した組織に変化しており、浸潤した好中球がきわめて自然に線維芽細胞に置き換わったためと考えられた。