- 著者
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後藤 明日香
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2016年大会
- 巻号頁・発行日
- 2016-05-06
1、研究目的 私は空の観察をしている際、空の濃淡が日によって異なっていることに気が付いた。そこで、空の青色の濃淡に影響する要素は何かに興味を持ち、研究を始めた。空の濃淡に関係する要素としては、空気中の塵や埃などが知られているが、私は観測がしやすい水蒸気に着目して研究を進めた。2、研究方法、研究結果、考察 まず、東西北方向の空を地上にてデジタルカメラ(CASIO EXLIM EX-10)を用いて撮影した。撮影は、2015年1月19日~1月29日の晴れている日に行った。撮影した写真を上空方向から地上に向かって高層、中層、低層に分け、ペイントソフト(ペイント.ink)を用いて、各層から適当に三か所選び色を抽出し、RGBの平均値を求めた。本校地学講義室にて使用している装置(DAVIS Vantage Pro2)を用いて、気温、湿度、気圧、風力、風向の5つのデータを採集し、水蒸気量と水蒸気圧を求め、空の色の濃淡と気象の関係性を調べた。その結果、青空の色が濃い日は、水蒸気量が少ない日であったことがわかった。つまり、空の色の濃淡には水蒸気量が関係しており、水蒸気量が多い日は青空の色が濃いと考えられる。さらに、撮影地点、色の抽出方法の改善を行った。撮影の場所を地上から空全体を撮影できる屋上に変更し(2015年9月28日~10月15日)、撮影方向も東西南北の4方向に増やした。RGBのデータもより詳しく抽出するため、写真の画素を475ピクセルに設定し、上空方向から地上に向かって3行ごとに高層、中層、低層の三層に分けた。ソフトは解析ソフト(Adobe photoshop CS5(64bit))を用いて、各行から一番色が濃いピクセルの色を無作為に抽出し、そこからRGBの値を求めた。その結果、青空の色が濃くなっていた日は水蒸気量が少ない日であった。逆に、青空の色が薄い日は水蒸気量が多い日であった。よって、1月に行った実験の結果と同じ結果が得られた。また、10月5日と8日は同程度の水蒸気量であったので、両日の青空の色の濃淡の比較を行ったところ、空の色の濃淡が異なっていた。このことから、水蒸気量以外にも空の色の濃淡に関係している要素があることが予想される。 そこで、水蒸気量以外で採集していた気圧、風力に着目した。比較した2つの日の天気図を見てみると、青空の色が濃かった日は、発達した低気圧が日本付近を通過していた。このことより、気圧も著しく低くなり、風力も大きくなっていた。このことより、発達した低気圧が日本列島付近に通過したことにより、大気中の塵やほこりが風に飛ばされるなどして減少する。それによって、青色の光を反射しやすい、大気分子の割合が大きくなり、青色の光が多く散乱される。逆に、緑や赤の光を反射しやすい塵やほこりの割合が減少してしまったため、緑や赤の光は散乱されにくくなってしまい、青色の割合が大きくなり、青空の色が濃くなったと考えられる。よって、気圧、風力も空の色の濃淡に関係している。 また、季節によって空の色はどのように変化するのかについても考察を行った(秋:2015年9月28日~10月15日、冬:2016年2月17日~2月24日)。水蒸気量については、秋のほうが冬に比べて水蒸気量が多くなっていた。空の色の濃淡については、秋のほうが冬に比べて青空の色が濃くなっていた。この結果から、両季節の一番青空の色が濃くなっていた日は、秋は水蒸気量、気圧ともに低く、これまでと同じ結果が出た。一方で、冬は気圧は低いものの水蒸気量は観測した日の中で最も高い値であり、これまでとは異なる結果が出た。このことより、気圧による空の濃淡の変化は、季節が変わっても共通しているが、水蒸気量による空の濃淡の変化は季節によって異なると考えられる。3、まとめ青空の色の濃淡の変化には、水蒸気量が関係しており、水蒸気量が少ないほど青空の色は濃くなる。また、水蒸気量のほかに、気圧、風力も空の色の濃淡に関係している。 秋と冬で気象や青空の濃淡について比較すると、秋のほうが水蒸気量が多かった。また、青空の濃淡おいて、秋のほうが青空の色が濃かった。 両季節で青空の色が濃くなっていた日、冬は水蒸気量が最も多かった日に青空の色が濃くなっていたことより、気圧の変化は季節が変わっても共通するが、水蒸気量による濃淡の変化は季節によって異なると考えられる。