著者
福山 千代美 加藤 栄子 普天間 歩 大久保 恵里 後藤 祐子 平岡 真砂代 今井 洋子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.145-152, 1998-07-10 (Released:2009-10-29)
参考文献数
12

我々は,調節緊張を起こした症例の,診断,背景ならびに治療法について検討したので報告する。対象は,調節緊張と診断され,症状の改善に長期間を要した9症例である。観察期間は,2~29(平均12.0)ヵ月であった。年齢は,9歳から11歳の小学校高学年の6名と,22歳から27歳の20歳代の成人3名の2つの分布を呈し,性別では女性に多かった。主訴は,学童群では視力障害が多かったが,成人群では羞明が多かった。初診時の裸眼視力は0.3以下が多く,矯正不良の症例が過半数を占め,全ての症例でマイナスレンズで矯正された。調節麻痺下では+1D程度の遠視が検出され,多くは+1D以上の戻りが認められた。このため調節緊張の症例では,潜伏遠視を背景とすることが多く,調節麻痺下の視力検査が有用であると考えられた。治療の原則は遠視の眼鏡常用と調節緩和で,予後は良好であるが,きめ細かな対処が必要である。