著者
不二門 尚
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.19-25, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
10

3D映像は、映像技術の進歩と疲れにくいコンテンツの開発により、映画を中心に普及する可能性が高い。3D映像の普及と共に、日常生活で問題なくても、輻湊不全や、代償不全の斜位など何らかの眼科的素因のある人は、眼精疲労や複視を訴える場合があることに、注意する必要がある。6歳位までの小児は立体視の発達過程にあり、調節性内斜視など、両眼視が障害されやすい素因のある場合、両眼を分離して見る3D映像の観賞は、注意する必要がある。また、立体視の弱い人が、3D映像社会でハンディキャップにならないような働きかけも必要と思われる。
著者
高橋 香莉 松澤 亜紀子 山中 郁未 鍬塚 友子 高木 均
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.185-192, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
12

【目的】カラーコンタクトレンズ(カラーCL)装用中に人工涙液点眼を頻回に点眼することによる、レンズ形状および角膜への影響について検討した。【対象及び方法】対象は眼疾患を有さない女性6名12眼。平均年齢は35.2±10.6歳。使用したソフトコンタクトレンズ(以下SCL)はデイリーズ®フレッシュルック®イルミネート™(Alcon社製)、使用度数は±0~-8.00D(平均-3.25±3.0D)。点眼薬はソフトサンティア®および生理食塩点眼を使用した。方法は、カラーCL装用前と装脱後に前眼部光干渉断層計(AS-OCT;以下CASIA)にて角膜厚、角膜曲率半径を測定。レンズを装用し、5分毎に10回点眼を行った。点眼1回後と10回後にCASIAにてレンズ着色外径を測定した。【結果】レンズ着色外径は、生理食塩水点眼群には変化はみられなかったが、ソフトサンティア®点眼群では、装用直後に比べ装脱直前には着色外径が有意に小さくなっていた。角膜厚と角膜曲率半径はすべての点眼液において、装用前に比べて装脱後の角膜厚が増大し曲率半径が大きくなる傾向がみられたが、有意差は認められなかった。その変化率はソフトサンティア®点眼群が最大であった。【結論】PVA素材のカラーCL装用下でのソフトサンティア®頻回点眼は、レンズ形状に変化が認められるだけでなく角膜への影響も認められた。そのため、SCL装用中に点眼薬を使用する際には、使用レンズと点眼薬の組み合わせや点眼回数に注意が必要である。
著者
塩釜 裕子 宮本 正
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.287-295, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

【目的】色覚補正眼鏡の一種であるカラービューに対する有効性を検討すること。【対象と方法】カラービューを用いて以下の四項目について検討した。①石原色覚検査表の誤読数及び、パネルD-15の横断線が減少するか。②20色の色の名前を正しく答えられるようになるか。③日本眼科学会ホームページに記してある、先天赤緑色覚異常が見分けにくい色の組み合わせの各二色(8種類、合計16色)が見分けやすくなるか。④「先天色覚異常の方のための色の確認表」を用いて複数の色から色名を用いて特定の色を選択できるようになるか。これらは1型2色覚、1型3色覚、2型2色覚、2型3色覚、各1名、合計4名の色覚異常者の協力を得て行った。【結果】カラービューの使用によって結果は以下のようになった。①石原色覚検査表の誤読数とパネルD-15の横断線は減少した。②色名を正しく認識できるようにはならず、逆に色名がわかりにくくなる場合もあった。③検討した二色の多くが見分けやすくなった。④色名を用いて特定の色を選択することはできなかった。【結論】色覚補正眼鏡カラービューでは正常色覚者と全く同じ色の認識を得ることはできない。特に色の名称を正しく認識するのは不可能である。また、使用することによって逆に色を混同する場合もあった。だが、特定の二色間の識別に関しては有効であった。
著者
赤塚 美月 中川 真紀 臼井 千惠 林 孝雄
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45-49, 2020 (Released:2021-02-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】急性内斜視を相次いで発症した2兄弟を報告する。【症例】兄弟1(一卵性双生児)兄:16歳発症。25⊿ET。1年前から近距離でスマートフォン(以下スマホ)使用。兄弟1弟:18歳発症(大学受験勉強中)。40⊿ET。兄弟2兄:15歳発症(高校受験勉強中)。60⊿ET。兄弟2弟:13歳発症。65⊿ET。1年前から近距離でスマホ使用。屈折異常は兄弟1正視、兄弟2近視。全例で遠・近見での眼位差なし。【結論】兄弟1兄と兄弟2弟は近距離のスマホ使用が、兄弟1弟と兄弟2兄は受験勉強(近業)が急性内斜視の発症誘因となった可能性があり、共通する遺伝要素を持つ兄弟でも発症に環境要因が影響することが示唆された。
著者
塩釜 裕子 宮本 正
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.287-295, 2014
被引用文献数
2

<b>【目的】</b>色覚補正眼鏡の一種であるカラービューに対する有効性を検討すること。<br><b>【対象と方法】</b>カラービューを用いて以下の四項目について検討した。①石原色覚検査表の誤読数及び、パネルD-15の横断線が減少するか。②20色の色の名前を正しく答えられるようになるか。③日本眼科学会ホームページに記してある、先天赤緑色覚異常が見分けにくい色の組み合わせの各二色(8種類、合計16色)が見分けやすくなるか。④「先天色覚異常の方のための色の確認表」を用いて複数の色から色名を用いて特定の色を選択できるようになるか。これらは1型2色覚、1型3色覚、2型2色覚、2型3色覚、各1名、合計4名の色覚異常者の協力を得て行った。<br><b>【結果】</b>カラービューの使用によって結果は以下のようになった。①石原色覚検査表の誤読数とパネルD-15の横断線は減少した。②色名を正しく認識できるようにはならず、逆に色名がわかりにくくなる場合もあった。③検討した二色の多くが見分けやすくなった。④色名を用いて特定の色を選択することはできなかった。<br><b>【結論】</b>色覚補正眼鏡カラービューでは正常色覚者と全く同じ色の認識を得ることはできない。特に色の名称を正しく認識するのは不可能である。また、使用することによって逆に色を混同する場合もあった。だが、特定の二色間の識別に関しては有効であった。
著者
岩崎 常人
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.39-44, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
11

現在の3Dテレビや3D映画での立体像を再生する方式には、二眼式表示法が用いられている。二眼式表示法に共通した点は、人為的に両眼視差を用いることである。人為的に両眼視差を誘起して立体像を知覚させると、視機能の点では調節機能と輻湊機能との相互関係に解離を来す。そのために二眼式表示による3D映像の鑑賞は、眼精疲労を誘発しやすい。 眼精疲労は、その原因が複雑多岐にわたり、一つの原因に特定して予防や治療を進めることが困難である。しかし、古くから眼精疲労に関する原因的分類として、以下の5つがある。①調節性眼精疲労、②筋性眼精疲労、③不等像視性眼精疲労、④症候性眼精疲労、⑤神経性眼精疲労。この分類に従うと、二眼式表示での3D映像鑑賞による眼精疲労は、調節と輻湊機能とが解離することから、調節性眼精疲労と筋性眼精疲労に当てはめることができる。 3D映像を鑑賞することによって発症する眼精疲労の原因が、どこにあるのかを特に調節機能に重点をおいて考えてみる。また同時に、その眼精疲労の対策の一例についても、調節機能を尺度として推察する。
著者
河村 正二
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-25, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
121

眼は単細胞真核生物の無方向性光センサー、色素遮蔽体による方向性光センサー、その集合化による低解像度視覚センサー、そして限られた分類群(頭足類、節足動物、脊椎動物)でその高密度化による高解像度視覚センサーへと進化した。高解像度視覚センサーはカンブリア紀初期(約5億3000万年前)には既に完成した。光センサーの分子実体はタイプIIロドプシンであり、動物と菌類の共通祖先の単細胞真核生物の時代(10~20億年前)にGPCRファミリーのメラトニン受容体から分化した。視覚センサーに使われている節足動物の感桿型オプシン(R-opsin)と脊椎動物の繊毛型オプシン(C-opsin)は、すでにヒトとクラゲの共通祖先で出現した。単純から複雑へと眼は進化したが、各段階がその必要に対して完成している。だからこそそれらは今も継続し、一方で短期間に複雑化できた。 脊椎動物では無顎類段階で、C-opsinは薄明視用の桿体細胞タイプと明視・色覚用の4種類の錐体細胞タイプに分化し、高度な4色型色覚が早くも確立した。魚類は水深や上下角で色覚を変えることができる。四足動物は基本的に画一的な4色型色覚を維持しているが、哺乳類は中生代に夜行性と関連して2種類の錐体オプシンを喪失し、2色型になった。しかし新生代に霊長類で2種類の錐体オプシンの一方をLとMオプシンに分化させ、3色型色覚が出現した。これは立体視や再高解像度化と連動し、俊敏な樹上生活への適応と考えられる。霊長類の特徴は色覚の多様性にもある。中南米に棲む新世界ザル類には様々な3色型と2色型が見られる。3色型色覚が登場したのに、なぜ2色型が存続しているのか?新世界ザルでは3色型の優越性が予測される果実採食においてすら2色型は劣っておらず、カモフラージュした昆虫の採食では2色型が優越している。旧世界霊長類の中で、ヒトには一般に色覚異常と呼ばれる色覚のバリエーションがある。進化の視点からは、ヒトの色覚変異には積極的な意味があると見ることができる。
著者
石川 哲
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-9, 2005-09-30 (Released:2009-10-29)
参考文献数
16

最近話題のシックハウス症候群(SHS)、多種化学物質過敏症(MCS)に関してその要点を総説的に解説した。本症は微量化学物質の慢性接触により生じた生体の自律神経、中枢神経、免疫系、内分泌系を中心とする過敏反応である。感覚器としての眼はちかちかする、異物感がある、視力が低下する、かすむ、中心部が見にくい、つかれるなどの症状、訴えが頻度的にも最も多い症状である。これら疾患の診断に眼は最も役に立つ器官である。何故ならば定量的にその障害が極く軽度のレベルから測定出来るからである。現在特に患者が多いのは新築により生じた症例、またはリフォームによる症例が中心をなしている。我々現代人は過去100年前には体験出来なかった合成化学物質蓄積が既にあり、生体内の解毒システムがそれに動員されるので、本来ならば反応しない低いレベルの物質でも閾値が低く反応が起こり発症する可能性が強い。我々の周辺の環境劣化は健康問題一つとして21世紀には絶対に放置出来ない限界点まで来てしまっている。Sick House, MCS問題で悩んでいる患者もこの環境劣化現象の結果現れた可能性が強い.今後我々は真摯な態度で環境問題を考えそれに対処して行く必要がある点を強調したい。
著者
原 直人 蒲生 真里
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.9-15, 2019 (Released:2020-02-28)
参考文献数
12

恒常性内斜視症例が増加するとされる中、斜視発症のメカニズムを近見反応の適応・学習から考察した。近見反応で重要な性質は、(1)輻湊―調節間クロスリンクが存在するため、調節により輻湊反応が、輻湊により調節反応が起きる、(2)近見反応は極めて環境に適応学習しやすいということである。近方視ばかりを長時間、繰り返し行う視環境となった変化に、近見システムそのものが適応するのであろう。また遠方視が必要とされない視環境であるので、開散運動しないことが現在の内斜視を発症させる1つのメカニズムと考えている。peri-personal spaceに対する近見反応の適応とともに、遠見視・開散の不必要による遠見無視から現代の内斜視について考えてみた。
著者
米田 剛 横田 敏子 田野上 恭子 魚住 和代 新井田 孝裕
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.115-125, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
8

【目的】視能訓練士の各養成校が指導している眼科検査の結果の記録方法を把握することを目的に、全国の各養成校へアンケート調査を実施した。 【方法】全国視能訓練士学校協会に加盟している27校にアンケートを送付し、同意が得られた養成校のみ回答を依頼した。地域差を考慮するために、愛知県を含み西側を西日本、東側を東日本とした。アンケートの設問は、「視力・自覚的屈折検査」、「両眼視機能検査」、「9方向眼位検査」、「大型弱視鏡検査」、「眼位検査」の検査結果について具体的な症例を挙げ作成した。また、各検査結果の表記に関する項目を68項目設けて単純集計した。表記に関する項目で50%以上を占める記載があれば統一性が高い記録方法として評価した。 【結果】アンケートの回収率は74%(20/27校)で、東日本は55%(11/20校)、西日本は45%(9/20校)であった。表記で統一性が高い項目は、全体で82.4%を占めることがわかった。表記の統一性が低かった代表例として、眼鏡装用下の表記では、「PG」が43%、「jB」が35%、「KB」が22%であった。 【結論】本研究で調査した検査結果で表記の統一性がみられなかった項目は17.6%であった。統一性が低い表記については、学生が臨地実習や就職先で対応できるよう各養成校で記録方法を共有して指導することが望ましいことがわかった。
著者
田澤 聖子 菅野 敦子 秦 規子 小林 昭子 原澤 佳代子 毛塚 剛司 後藤 浩
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-111, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
15

小児の外転神経麻痺は多くの場合、脳腫瘍や頭蓋内圧亢進、外傷などによって引き起こされる。一方、ウイルス感染やワクチン接種に関連した外転神経麻痺の発症は比較的稀である。 インフルエンザワクチン接種後に良性再発性外転神経麻痺を繰り返し発症した5歳女児の症例を経験したので報告する。初回の麻痺は2か月後に回復したが、その1年後に再発した。再発時の麻痺は、約3か月後に回復した。発症の度に頭部CTを施行したが、明らかな異常は発見されなかった。 小児の外転神経麻痺ではウイルス感染やワクチン接種について詳細に尋ねること、再発の可能性を考慮して経過観察を続けることが重要である。
著者
枝川 宏
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.183-190, 2015 (Released:2016-03-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

スポーツでは視力は重要である。しかし、スポーツと視覚の関係については、まだわかっていないことが多い。そのためスポーツと視覚の研究は様々な分野で行われていて、研究内容は多岐にわたる。なかでも、選手の視覚を解明しようとする研究は多い。 スポーツ選手の視覚の研究には脳の機能を中心に分析する研究と眼の機能を中心に分析する研究がある。眼の機能を中心に分析する研究者は選手の眼の能力は優れていて、視覚訓練で競技能力は向上すると考えている。我が国ではマスコミなどを通してたびたび紹介されている。しかし、脳の機能を中心に分析する研究者は選手の眼の能力は一般人とほとんど変わらず、視覚訓練で競技能力は向上しないと考えている。現在諸外国においては選手の視覚の研究は検査技術の進歩や眼の機能を中心に分析する研究に疑問点が多いことから、脳の機能を中心に分析する研究が主流になっている。 今回はこの2つの研究分野の違いとスポーツにおける視覚の重要性を説明して、今後眼科領域がスポーツ分野に果たすべき役割について考える。
著者
江本 正喜
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-37, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
43

実用化を迎えたステレオ方式3D映像は、2D映像による生体影響に加えて、視聴者に両眼立体視に伴う視覚疲労を起こす可能性が懸念される。この視覚疲労の要因、機序、防止方法を検討するため、視覚疲労要因をあらためて整理した。まず、実体視の例から類推して左右像の融像努力が必要となるような疲労要因を、非原理的要因である左右像差と、原理的要因である水平両眼視差に分類した。この分類に基づく2つの疲労評価実験を、主に視機能変化を指標として行った。実験1では両要因が混在する状態での疲労評価を行い、2D映像と3D映像による視覚疲労の差を検証した。その結果、2Dより3Dの方が疲労が大きいことが示唆された。実験2では、原理的要因のみが存在する疲労負荷による疲労評価を行った。その結果、快適視域を超える大きい輻湊負荷や、その時間変動が視覚疲労の原因となることが示唆された。これらに基づき、見やすく、視覚疲労の少ない良質な3D映像の制作のために次を推奨する。(1)左右映像の差を最小化すること、(2)視聴者に提示される両眼視差分布とその時間変化を統制すること、(3)瞳孔間隔の狭い年少者への配慮を行うこと。また、課題として、3D映像視聴による発達への長期的影響は不明であることを指摘し、さらに、若年者の視聴環境を十分に管理する必要性と、これらの問題に配慮ができる番組制作者の育成や経験の蓄積が急務であることに言及する。
著者
池田 結佳 松岡 久美子 須田 美香 太根 ゆさ 平松 純子 山内 まどか 薄井 聡子 森本 尚子 藤井 靖史
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.135-145, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
33

【目的】読み書きに困難を抱える児童を対象に、視覚関連基礎スキルアセスメント(WAVES)を用いて視覚認知機能を評価し、支援への活用を検討すること。【対象および方法】対象は2020年3月から2021年6月の帝京大学病院小児科LD外来受診者のうち、WAVESと見る力に関するチェックリストを実施した30名(男児25名・女児5名、年齢9.8±2.1歳)。WAVESを行い下位検査評価点と4つの指数を算出した。【結果】下位検査評価点の平均値の多くが標準値より低かったが、線なぞりの合格点と比率、形なぞりの比率は標準値より高かった。4つの指数では、視知覚+目と手の協応指数(VPECI)と視知覚指数(VPI)が標準値より低く、VPIが最も低かった。目と手の協応全般指数(ECGI)と目と手の協応正確性指数(ECAI)は標準値より高かった。【考按】視知覚指数(VPI)は読み書き困難を持つ児童では低く、過去の報告と同様の傾向を示した。眼科検査、言語検査、心理検査と合わせてWAVESを活用することで苦手の背景にある児童の特性を推測し、読み書き指導に有用な情報を与える可能性がある。
著者
榊原 七重
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.41-49, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
37

眼は、成長発達、さらに加齢により変化する。臨床経過観察において基準となる屈折経年変化の正常データは重要である。今回、ほとんどのデータは古いものであったが、各種の検査で得られている生体計測データはなお有益である。そこで、これらの屈折要素について文献をレビューし、屈折経年変化について考察し、その特徴を明らかにしようと試みた。 屈折状態は、主な屈折要素である角膜、水晶体、眼軸長により形作られる。 角膜屈折力は、新生児で最も強く、4~9歳までに成人と同程度まで減少する。水晶体は生涯を通して変化するが、新生児は老年期の2倍の厚さと屈折力を持つ。眼軸はその成長に3つの段階があり、18か月までに急激に、その後5歳まではややゆるやかに、その後さらにゆるやかに13歳頃まで伸展し近視化し、それ以降の伸びはほとんど無い。これら角膜屈折力、水晶体屈折力、眼軸長を基に、SRK式を用い、各屈折要素から全屈折力を算出すると、2歳以降に近視化することが示されたが、同時に9歳までは遠視化する可能性が考えられた。 屈折は、生直後は遠視にピークを持つ正規分布であると報告されているが、学童期は正視、中高生においては正視と近視にその分布は集中化する。遺伝因子、環境因子などによって屈折の変化には個人差があり、屈折分布には世代間差があることが知られている。これらのことから、今後日々の臨床において、正確でその時代にあったデータの収集を行いつつその利用が必要であると考えられた。
著者
山口 真美
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-8, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
31

その昔、生まれたばかりの新生児は眼が見えず、耳も聞こえないと信じられてきた。しかし数々の心理実験から、胎児の時から音を聞き、生まれた直後の新生児でも眼が見えることがわかっている。新生児のもつ、驚くべき能力の一つに、顔を見る能力がある。 1960年代Fantzにより、新生児が顔を選好することが発見された。言葉を喋ることのできない乳児の認識能力を調べるため、Fantzは行動を用いた実験手法である「選好注視法」を考案した。乳児は特定の図形に選好する傾向があることを示したその中で、顔図形への選好も発見されたのである。 視力の未発達な乳児は大人と全く同じように世界を見ているというわけではない。にもかかわらず、新生児でも顔を選好するということから、その特異な能力が検討されてきた。本講では、乳児を対象として行われた行動実験や、近年行われた近赤外線分光法(NIRS)を用いた実験の成果を紹介する。倒立顔の効果や顔向きの効果、運動情報による顔学習の促進効果や視線の錯視の認知といった、一連の実験成果について報告する。
著者
仲泊 聡
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.7-17, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
38

本稿では、視覚皮質の機能局在と日常生活動作の関係について述べる。まず、網膜から脳までの視覚伝達経路における神経回路について紹介する。その中で、脳における視覚の本質に対して異なる選択性をもつ、網膜神経節細胞のサブタイプ、視覚皮質の網膜部位再現と視覚経路について述べる。次に、我々の行った視覚障害者の日常生活動作の様々な局面に関してのアンケート調査から、1)対象認知、2)空間認知、3)精神への影響、4)眼球運動反射、5)順応と恒常性の5つの事柄が、QOV(視覚の質)に必要な本質であることについて述べる。そして、最後にこれらの5つの視覚の本質が、網膜神経節細胞のサブタイプに端を発する視覚皮質の局在に深い関係があるということについて論じる。
著者
瀬戸 寛子 大島 裕司 松田 由里 手島 由貴 村上 美智子 堀江 宏一郎 関 正佳 石橋 達朗
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.163-169, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

【目的】米国American Medical Association(AMA)が推奨し、QOLと相関すると言われているFunctional Vision Score(FVS)を用いて本邦で視覚障害に認定されている患者の障害の程度をスコア化し、日本の障害等級とFVSを比較した。【対象および方法】対象は視覚障害に認定されている42例(1級8例、2級19例、3級6例、4級3例、5級6例)男性20例、女性22例である。 視力値からFunctional Acuity Score(FAS)、Goldmann視野からFunctional Field Score(FFS)を求めFVSを算出し、本邦の各障害等級とFVSを比較した。【結果】本邦の各障害等級に相当するFVSの値は1級0~19.9%、2級2.9~60.2%、3級6.9~62.1%、4級7.6~27.5%、5級11.9~74.4%であり、障害等級とFVS間には有意な相関が認められた。(Spearman順位相関係数 r=0.47、p=0.0014)また、AMA分類にあてはめるとclass 4(国際分類:ほぼ全視覚喪失)は1級6例、2級5例、3級1例、4級1例、5級1例、class 3b(極度視覚喪失)は1級2例、2級8例、3級4例、4級2例、5級1例、class 3a(重度視覚喪失)は2級3例、5級3例、class 2(中等度視覚喪失)は2級3例、3級1例、class 1(軽度視覚喪失)は5級1例、class 0(正常視覚)はすべての級で0例であった。【結論】日本の障害等級とFVSには相関がみられたが、日本の障害等級が同等であってもFVSの基準に従い分類した結果、異なるクラスに分類される症例があった。