著者
御手洗 哲也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.172-178, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10

妊娠において最も頻度の高い合併症は妊娠高血圧症候群で,発症には遺伝的素因とリスク因子が関与する.主な病態は胎盤発育不全による胎盤虚血,それに起因する母体の血管内皮細胞障害と高血圧,および子宮内胎児発育遅延であり,蛋白尿を伴う場合は妊娠高血圧腎症と称する.腎疾患はリスク因子であり,加重型妊娠高血圧腎症を合併しやすい.降圧治療は母体合併症の予防には有用だが,妊娠期間の延長には繋がらない.妊娠早期に発症を予知し,発症を抑制する新たな治療法の開発が望まれる.高血圧は分娩後に軽快するが,長期的に見ると本症候群合併妊婦は心血管病,メタボリック症候群,慢性腎臓病のリスクが高く,複数回繰り返すと末期腎不全の集積発症頻度も高くなる.低出生体重児も慢性腎臓病や高血圧の高リスク群で,本症候群を経過した母児には,この様な視点に立ったtotal-life careが必要である.