- 著者
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御舘 久里恵
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.178, pp.124-138, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
- 参考文献数
- 6
本稿では,初級日本語学習者の教室におけるプライベートスピーチを分析した。プライベートスピーチの機能は,代理応答,目標言語の操作,思考の媒介,選択的注意,モニタリング,コメント,言葉遊びの7 つに分類されたが,機能を特定できないものもあった。出現率が高くなる教室活動の特徴として,言語的難易度が高い,読み書きが必要である,全ての学習者に理解と産出が要求される,教室内が静かすぎないという点が挙げられる。学習者によって,プライベートスピーチをほとんど発しない者,プライベートスピーチで仮説検証や分析を行う者,メタ認知と心理的負担の軽減にプライベートスピーチを使用する者,楽しむために使用する者といった異なりが見られ,プライベートスピーチによって各自のニーズに合わせた学習空間を作り出している様子が明らかになった。また,プライベートスピーチの現れ方と使用言語から,社会的発話との連続性も明らかになった。