著者
御舘 久里恵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.3-17, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
36

本稿では,地域日本語教育のあり方と,そこに関わる人材に必要とされる資質・能力,及びそれら人材の育成内容と方法について検討した。地域日本語教育は社会参加のための言語保障と地域社会の変革を目指して実施される相互学習とを包含したシステムとして位置づけられ,そのシステムを機能させるための専門職を配置し体制を整備することが不可欠である。地域日本語教育に関わる人材は専門職としてのシステム・コーディネーター,地域日本語コーディネーター,地域日本語教育専門家の3者と,日本語ボランティアとに分けられ,それぞれの役割に応じて求められる資質・能力と育成内容は異なるが,育成方法としては現場主義,振り返り,共有と協働,継続性といった点が共通して重視される。また,地域日本語教育において指摘される参加者間の非対称性の問題を人材育成の観点から打開する視点として,外国人等人材の育成と,実践の振り返りの徹底が挙げられる。
著者
御舘 久里恵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.124-138, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
6

本稿では,初級日本語学習者の教室におけるプライベートスピーチを分析した。プライベートスピーチの機能は,代理応答,目標言語の操作,思考の媒介,選択的注意,モニタリング,コメント,言葉遊びの7 つに分類されたが,機能を特定できないものもあった。出現率が高くなる教室活動の特徴として,言語的難易度が高い,読み書きが必要である,全ての学習者に理解と産出が要求される,教室内が静かすぎないという点が挙げられる。学習者によって,プライベートスピーチをほとんど発しない者,プライベートスピーチで仮説検証や分析を行う者,メタ認知と心理的負担の軽減にプライベートスピーチを使用する者,楽しむために使用する者といった異なりが見られ,プライベートスピーチによって各自のニーズに合わせた学習空間を作り出している様子が明らかになった。また,プライベートスピーチの現れ方と使用言語から,社会的発話との連続性も明らかになった。