著者
徳田 久美子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.128, no.3, pp.173-176, 2006 (Released:2006-09-14)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

統合失調症治療薬(抗精神病薬)には,ほぼ全てに共通してドパミンD2受容体拮抗作用があり,ドパミン神経機能の異常に基づく病態モデルにおいて,各種の行動異常を抑制する.このようなD2受容体拮抗作用は,臨床における幻覚,妄想等の陽性症状改善に寄与すると考えられている.しかし,D2受容体に選択的な拮抗薬では,重篤な運動障害である錐体外路系副作用(EPS)や内分泌系副作用を誘発しやすい点が問題とされたため,最近では,EPSが軽減された非定型抗精神病薬による治療が主流となっている.非定型抗精神病薬の多くは,D2受容体拮抗作用に加えて,セロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し,感情鈍磨や自発性欠如等の陰性症状にも有効とされる.一方,抗精神病薬による過度の鎮静・血圧降下等の副作用には,アドレナリンα1受容体やヒスタミンH1受容体に対する拮抗作用が関与すると言われる.現在,NMDA受容体機能低下仮説に基づく非ドパミン系の薬剤や,認知機能改善に焦点を当てた薬剤も開発が進められており,今後の動向が注目される.