著者
猪爪 陽子 金澤 信幸 玉虫 俊哉 徳間 由美 岸本 和幸 佐合 悦子 高津 由子 武藤 敏男
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.14, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】神経難病は進行性であり,身体運動機能の低下に加え様々な症状を呈し,本人はもとより介護に当たる家族をも苦しめる。当院でも老々介護・一人介護が多く,介護疲れを感じるケースもある。リハビリテーションでは,神経難病の患者様(以下,患者)が少しでも身体運動機能・精神機能を維持・向上させ,自分らしく楽しく暮らせるよう援助していくことが目標となるが,同時に患者を支える介護者・家族の支援(以下,介護者支援)も重要と考える。そこで,介護者支援の取り組みを開始したので報告する。 【方法】介護者支援で必要な事として1.勉強会 2.介護者ネットワーク作りを考えた。勉強会では1)病気に対する正しい知識を得る2)介護力を高める技術や知識を得る3)患者に対する理解を深める,をテーマとし平成21年度に3回実施した。介護者ネットワーク作りでは1)介護者同士のつながりをつくる2)情報交換を通じて新しい力を生み出す3)介護者自身の心の整理を促すことを目標とし,グループワークを中心に22年度に5回開催した。対象者は,神経難病デイケアに通院されている患者家族を中心に声をかけ,医師,看護士,医療ソーシャルワーカー,理学療法士,言語聴覚士,作業療法士で対応した。スタッフ側では事前の学習会や事後ミーティングを行い,参加者には毎回アンケートをお願いし意向調査した。 【結果】勉強会では,延べ参加人数105名(内介護者57名),アンケートから「大変参考になった」「少しの工夫で楽に介護できることがわかりました」等の意見をいただいた。介護者ネットワーク作りでは,延べ参加人数81名(内介護者58名),アンケートから「皆さんの悩みは殆ど自分と同じでほっとした」「接し方を変えてみようかなと思った」等の感想が得られた。また,長期介護を続けられている方の意見に感心し,妻,夫,嫁等立場の違う人の話に共感を示す場面も見られた。介護者とスタッフとの会話が増え,介護者同士で話をしているのを多く見かけるようになった。次年度への要望として「自分自身のためにぜひ開催してほしい」という意見を多くいただいた。 【考察】神経難病患者や家族を取り巻く環境は多様で一様に支援を考えることはできないが,ポイントとして1)誰に何を相談できるのかがわかる事2)自分ひとりではないと思える事3)介護者が自分自身を見つめ直す時間ができる事が重要であると考える。今回の取組みで我々は介護者の思いを知ることができ,コミュニケーションを取りやすくなった。介護者は介護に対する認識が深まり,前向きに取り組もうとされていると考えられる。介護状況は変化するので,勉強会・グループワーク等の支援を継続していく必要があると考える。