著者
金 宣吉 志岐 良子
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 = Journal of volunteer studies (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-42, 2014

1980年代、90年代に起きた難民条約批准によるインドシナ難民受入、身元引受人制度改善による中国残留邦人帰国者の増大、入管法改定による日系人在留資格拡大、急増した国際結婚などによって外国にルーツを持つ子どもが日本に急増した。日本のような高度産業社会では、外国にルーツを持つ子どもの進学の重要性が認識されるべきであるが、正確な状況の把握さえ十分ではない。外国にルーツを持つ子どもの高校進学率は、日本人の子どもの50%~70%程度と推察されており、その原因として移住家庭をとりまくさまざまな問題がある。子どもたちが何につまずいているかを知ることができないと「学びの保障」について本質的に考えるべき視点も生みだしをえない。本稿では、進学を阻む要因と進学を実現するための支援について、古くからの移住民多住地域である神戸市長田区における進学支援活動から考える。その上で進学支援の成果や課題を、移住家庭で育まれる母文化の継承や民族名の選択といった当事者である子どもの生き方も含めて考えたい。また子どもたちが成長するホスト社会である日本があるべき変化を遂げて受け入れているかという課題についても考察したい。