著者
脇本 博文 沖重 薫 畔上 幸司 大庭 景介 倉林 学 上原 裕規 瑞慶覧 貴子 小西 正則 志村 吏左 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.134-139, 2007

後天性QT延長症候群は種々の原因により発生するが,アルコール離脱により生じる後天性QT延長症候群(LQTS)の認識はうすく,同病態下における多形性心室頻拍(torsades de pointes;TdP)発生の報告も少ない.今回,われわれは失神を主訴としたアルコール離脱期のLQTSに伴うTdPを2例経験した.<BR>症例1:23歳,女性.20歳ころよりビール2L/日,焼酎1L/日の飲酒を繰り返し,アルコール性肝不全にて当院入院となった.失神発作を発症し心電図モニターにてTdPが確認された.基礎心疾患なし.QTc=0.753msecと著明に延長(入院時QTc=0.529msec)し,マグネシウム静注,イソプロテレノール持続投与にてTdPは減少,QTcも徐々に短縮した.<BR>症例2:50歳,男性.48歳ころより飲酒量が増え,日本酒1升/日の飲酒を続けていた.他院にてアルコール依存症と診断され禁酒を指示されたが,その後も不定期に飲酒を繰り返していた.失神発作を発症し救急車にて当院へ搬送された.心電図はQTc=659msecと著明に延長しTdPを繰り返していた.基礎心疾患なし.マグネシウムの静注後TdPは消失し,その後QTcは徐々に短縮した.<BR>2症例とも後日施行した心臓電気生理学検査(EPS),epinephrine負荷試験では有意な所見を認めなかった.