- 著者
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惟村 光宣
富田 和男
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 日本農芸化学会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.6, pp.479-484, 1962
- 被引用文献数
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α-Chloro-β-nitrostyrene誘導体の合成はフェニルアセチレン誘導体を四塩化炭素に溶解して冷却し,これに-10°以下の温度で同じ溶媒に溶解した塩化ニトワシルを加えて防湿下-10°に保ち,数日後に室温としてさらに4~5日放置した後揮発性物質および溶剤を減圧で除き,残留物を減圧蒸留することによって得た.<br> またα-thiocpano-β-nitrostyrene誘導体は上記α-chloro-β-nitrostyrene誘導体のアルコール溶液をロダンカリで処理して得た.寒天平板希釈法による上記化合物の植物病原菌に対する抗菌力は, β-ニトロスチレン誘導体のそれに比べていずれも強かった.そして薬害は100γ/mlの濃度でわずかにみとめられる程度である.<br> イネゴマハガレ病菌分生胞子発芽試験ではα-thiocyano-β-nitrostyreneの効力がすぐれていた.しかし種子消毒試験の結果20γ/mlの薬ではほとんどの化合物も効果なく,わずかに1-(<i>p</i>-chlorophenyl)-1-thiocyano-2-nitroetheneが消毒率22.4%を示したのみであった.そして前の寒天平板希釈法による抗菌力と種子消毒効力をみれば, α-位置換β-ニトロスチレン誘導体の抗菌力は使用濃度では静菌的であることがうかがわれる.<br> また殺虫効力はイエバエ,モモアカアブラムシなどにはほとんど効力なく,特に前者に対してはβ-ニトロスチレン, α-phenyl-β-nitropropene誘導体などよりも劣っていた.しかしキイロショウジョウパエ,ミカンハダニなどに対してはやや効果的であった.