著者
惠美須屋 廣昭
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.118-123, 2015-06-29 (Released:2016-07-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

味噌、醤油、漬物や酒造りなどの発酵食品の製造において、乳酸菌は乳酸を生産してpH を下げて、他の微生物の繁殖を抑制するという重要な働きを行っている。また、酢酸菌を用いて生産する食酢に抗菌活性があることはよく知られている。環境中のpH を下げることで雑菌汚染を防ぐという抗菌作用は乳酸と酢酸に共通するものであるが、酢酸は細胞内に浸透するという特性があり、それゆえに乳酸に比べてより高い抗菌活性を有している。酢酸菌が生産する酢酸は、酢酸菌自らにとってもストレスになるのだが、酢酸菌は高濃度の酢酸共存下でも生育が可能であり、酢酸菌に特有の耐性機構が幾つか明らかになってきている。すなわち、①酢酸を細胞内へ流入しにくくする、②細胞内の酢酸を効率よく消費する、③細胞内の酢酸を細胞外に排出する、④細胞内の環境変化への対応機構をもっている、である。これらの現在確認されている酢酸菌の持つ酢酸耐性機構について概説する。