著者
成宮 準一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.112-123, 1960

食餌と動脈硬化ならびに高血圧の問題は,近代医学における重要な関心の一つであるが,わが國では農村生活者と都市生活者では食生活に著しい差がみられるので,農村生活者の血清脂質の構成を分析し,動脈硬化症発生との因果関係を既に判明している都市生活者のそれと比較することは,動脈硬化発生に対するlipoproteinの役割を更に明瞭にするものと考え,この研究を行なった.研究方法の中心をなすものは血清脂質の超遠心分析法である.その結果比較的低脂肪食をとる農村生活者においても血清1ow density lipoproteinの濃度と動脈硬化症の進展とは密接な関係がみられ, Atherogenic lndex for Japaneseは農村生活者をこおいても動脈硬化の進展の判定に血清總cholesterolの測定よりは優れていることがわかった.たゞし農村生活者の血清lipoproteinは都市生活者より低いが,これは農村では動脈硬化の進展が都市生活者よりも遅く,その動脈硬化性疾患による死亡率の差はこれに基づくと説明し得る.