- 著者
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戴 玉才
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- no.127, pp.185-190, 1995-03
- 被引用文献数
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中国の国有林地域は,従来から社会的・経済的諸条件によって人口が希薄であった。国有林は主に「組織移民」,「官民協力移民」,「復員対策移民」という政策によって人口の多い黄河,長江下流域からの未婚中壮年農民や解放軍の除隊兵士を主体に移民させることによって森林開発に必要な労働者を求めた。国有林企業を中心とする地域の社会基盤の整備と移民労働者とその家族の定住によって辺鄙な奥地に地域社会が形成された。国有林地域への大規模な移民は,10年間ほど続けられたが,1960年代にはほぼ停止された。しかし少数の移民は1970年代後半まで続けられた。1980年代に入り,国有林労働者は,ようやく地域内の高校,中学卒業生やUターンして戻った大学,専門学校卒業生および復員兵士で地域内供給できるようになり,移民政策は完全に終止符を打った。国有林経営が単なる森林開発から林産物生産以外に係わる多角経営に取り組むにつれて,移民労働者の就業は森林開発の一極集中から離脱し,森林経営,木材加工,一般的産業及び社会部門へと分流し,多元的就業構造が形成されている。