著者
戸井田 宏美
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

湿潤な日本において,現在の細霧冷房法は細霧噴霧速度や噴霧時間は気象条件などによらず一定であり,日射強度や換気速度を考慮して可変とする制御法の検討が十分でないために,温室内気温の不均一化,高相対湿度,蒸発しきれなかった水滴の植物表面への付着による病害発生などの問題がある.本年度は,比較的小規模の実験用植物生産施設において,上記の問題を解決することを目的として(1)細霧発生方法の改良および(2)細霧発生量制御方法の改良について,短期的な効果の検証を行った.(1)日射のない室内において細霧ノズルに直径10cmの送風装置を取り付けて強制通風した場合の細霧蒸発率は,従来の送風装置のない場合に比べて1.6倍の95%となり,ノズル直下の気温水平分布もより均一となった.送風装置の効果により発生させた細霧のほとんどが蒸発するために,植物に未蒸発細霧が付着して病害が発生する危険を回避でき,細霧冷房システムを連続運転できることが示された.(2)従来,細霧冷房システムは未蒸発細霧を蒸発させるためにタイマー制御による断続噴霧を行うが,これにより気温および相対湿度の急激な変動が起こる.また,噴霧速度および噴霧時間は気象条件などによらず一定であった.(1)の細霧冷房システムを小型植物生産施設内に設置し連続運転を行った結果,未蒸発細霧の植物表面への付着は見られず,施設内気温を外気温より常に低く維持でき,かつ,気温および相対湿度の変動を減少させることができた.さらに,噴霧速度を可変とすることにより気温低下幅も可変となったため,連続運転制御法を確立するための基礎知見を得ることができた.植物生産施設内気温の測定には,通常,通風乾湿球計を用いるが,細霧冷房システム運転中には未蒸発細霧がセンサー部に付着して,実際の気温よりも低い数値を計測してしまう問題があることが本研究中に明らかとなった.そのため,細霧冷房システム運転中の正確な気温の測定法についても検討を行い,新たな測定法を提案した.