著者
手嶋,紀雄
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, 2008-05-05

1回の試料注入(ワンショット)でアスコルビン酸(AA)とグルタチオン(GSH)を同時定量するフローインジェクション分析法を開発した.AAは,鉄(III)-1,10-フェナントロリン(phen)錯体を迅速に鉄(II)-phen錯体(λ_<max>=510nm)へと還元するが,GSHによる還元反応は遅い.本研究ではGSHによる還元反応が銅(II)の共存により著しく加速されることを見いだした.したがって,生成する鉄(II)-phen錯体の吸光度は,銅(II)非共存下ではAAのみの量,銅(II)共存下ではAAとGSHの総量に相当する.これらの反応をダブルフローセルを装着したフローシステムに導入した.その結果,AAはダブルフローセル内の第1セル室で検出され,その後,銅(II)を合流させてAAとGSHの合量を第2セル室で検出することが可能となった.最適条件下でAAは5×10^<-7>から5×10^<-6>M,GSHは2×10^<-6>〜1×10^<-4>Mの濃度範囲で同時定量することができた.試料処理速度は毎時45試料であった.本法を医薬品及び栄養補助食品中のAAとGSHの定量に応用し,良好な結果を得た.