著者
折橋 洋一郎 垣田 康秀 立石 香織 西脇 俊二 石田 元男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1009-1015, 1994-12-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
19

炭酸リチウム5~15年長期投与の男性23例, 女性25例, 計48例の脳波所見を調べ, 脳波異常は55歳未満で33.3%, 55歳以上で53.3%と55歳を境に脳波異常が増し, 炭酸リチウムの長期投与が脳波上の加齢現象を促進するのではないかと考えられた. また, 55歳未満群33例で脳波異常は男性30.4%, 女性48.0%と明らかに女性の方が多く, 異常所見の内容は, α波の周波数が遅い汎α活動, θ波の混入など軽度の脳機能低下を示すものが多く, 他の抗精神病薬の脳波への影響と大差はないようであった. リチウムresponderが女性に多いことを合わせ考え, 脳波異常をきたすメカニズムそのものが, 抗躁ないし予防効果と関係があるのではないかとの想定を述べた.血清リチウム濃度, 内服期間, 甲状腺腫の有無, 予防効果など他の因子と脳波異常の間にははっきりした関係がみとめられなかった.