著者
井口 利仁 吉岡 孝 五味 慎也 中井 肇 折田 洋二郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.1575-1580, 2003-11-01
被引用文献数
7

輸入脚空腸憩室穿孔に随伴した特異な腸石の1例を経験した.症例は75歳の男性.胃切除術の既往を有し,C型慢性肝炎治療のためursodeoxycholic asid(以下,UDCAと略記)を投与されていた.2002年3月12日,腹痛のため当院内科に入院,翌日腹膜炎の診断にて外科に紹介され緊急手術を施行した.前回手術ではBillroth II法で消化管再建されていた.輸入脚空腸穿孔により腸間膜膿瘍が形成され,膿瘍内に結石を認めた.空腸を部分切除し, Roux en Y吻合による消化管再建術を施行した.病理組織検査にて空腸憩室炎からの穿孔と診断された.結石は中核と外殻より構成され,中核の主成分はdeoxycholic acid.外殻はUDCAであった.胆汁酸腸石が中核となり,薬物が外殻を形成した混成腸石である可能性が示唆され,結石形成に空腸憩室とBillroth II法再建が関与したと考えられた.