著者
大石康智 亀岡弘和 持橋大地 柏野邦夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.22, pp.1-8, 2013-08-24

歌声の声の大きさの変化 (音量軌跡と呼ぶ) を楽譜と関連付けて特徴づけ,未知の楽譜に対して,その音量軌跡を予測できる生成過程モデルを提案する.数名の歌唱者による同一曲の歌声の音量軌跡を観察した結果,歌唱者ごとにその動特性は特有であり,楽譜や歌唱表現に起因する成分が含まれることがわかった.また,同一歌唱者による数曲の歌声の音量軌跡を観察したところ,歌唱者はいくつかの動特性パターンを所有し,楽譜が与えられた下で,パターンを使い分けて歌唱すると考えた.これらを踏まえて,楽譜における様々なコンテキスト (音符の音高や音長,音符内位置,前後の音符情報など) が与えられた下で,歌唱者が描くであろう音量軌跡を生成するモデルを構築するために,混合ガウス過程を用いる.複数のガウス過程によって音量軌跡の多様な動特性が特徴づけられ,これらの混合モデルによって歌唱者が時々刻々と動特性パターンを使い分ける動作が表現される.評価実験では,単一のガウス過程を用いるより,混合ガウス過程を用いて音量軌跡の動特性を特徴づけた方が,未知の楽譜に対する音量軌跡の予測性能が高いことを示す.また,音符のコンテキストの種類と予測性能の関係について考察する.