著者
Limcumpao Joselito A. 掘本 泰介 高橋 英司 見上 彪
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.351-359, 1990-04-15
被引用文献数
1

ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)糖蛋白質(gp)の感染細胞内における局在部位と輸送を調べるために, 単クローン性抗体による間接蛍光抗体法(IFA)を経時的に行った. 抗gp143/108抗体による蛍光はウイルス感染4時間後に細胞膜と核膜部位において初めて認められ, 8時間目以後は核周囲および細胞質内にも明瞭な蛍光が見られた. gp113に対しても同様の部位において反応が見られたが, 8時間目までは蛍光が認められなかった. 一方, 抗gp60抗体による蛍光は感染12時間後に核の近傍および周囲に初めて認められ, 16時間後には核内に, また20時間後には細胞質内にも蛍光が認められた. さらに, これら3種類の糖蛋白質は感染細胞膜表面にも発現されていることが, 未固定感染細胞を用いたIFAにより明らかになった. 次に, ELISA additivity試験により各糖蛋白質上のエピトープマッピングを行ったところ, gp113は2ドメインにより構成されており, そのうち一つは, 部分的に重複する3エピトープを持つウイルス中和反応に関与するドメインであると考えられた. 一方, gp143/108には重複領域を持つ5エピトープで構成される一つの抗原領域が存在し, そのうち1エピトープはこの糖蛋白質を認識する全ての単クローン性抗体と反応するものと考えられた.