著者
斉藤 幹良
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.3, pp.168-174, 2016 (Released:2016-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1

現在,世界で50品目を超える抗体医薬品が承認されており,2013年の抗体医薬の市場規模は7兆円を超える.抗体医薬の適応疾患は,当初のがん,免疫炎症疾患ばかりでなく,感染症,骨粗鬆症,加齢性黄斑変性症,高脂血症などへも広がってきている.近年,免疫チェックポイント阻害薬,T cell engager,抗体依存性細胞障害活性増強抗体,antibody-drug conjugateなど新たな作用機序を有する抗体や薬効を増強した抗体が実用化され,従来の抗体医薬では難しい疾患や症例に対して新たな治療法を提供している.激しい競合の中でいかに新たな価値を提供できるかが課題であり,今後の抗体医薬の方向性として,薬効増強や血中動態の改善など抗体の機能増強技術がさらに進展して行くとともに,その一方で,コスト低減に向けた抗体のバイオ後続品の開発がさらに活発化して行くものと思われる.