著者
斉藤 雄之助
出版者
南西海区水産研究所
雑誌
南西海区水産研究所研究報告 (ISSN:0388841X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.p51-68, 1980-03
被引用文献数
3

1976,1977年に瀬戸内海関係14府県の水産試験場ならびにその他関係機関および南西海区水産研究所が沿岸海域藻場調査の一環として実施した藻場干潟分布調査の潜水坪刈調査の結果を用い,瀬戸内海域およびその周辺海域におけるホンダワラ科藻類の分布特性について検討した。(1)この調査においてホンダワラ科の29種の藻類が採集された。(2)調査海域を大阪湾,播磨灘,備讃瀬戸,燧・備後灘,安芸灘,広島湾,伊予灘,周防灘東部域,同西部域,豊後水道,豊後水道外海域,四国南岸域,紀伊水道外海域,紀伊水道の14海域に区分し,各種の各海域における出現率を検討した結果,これらの海域は出現率の類似性からA: 瀬戸内海,B: 紀伊水道およびその外海域,C: 豊後水道域,D: 豊後水道外海域,E: 四国南岸域の5つの群にまとめられ,また瀬戸内海域はa: 大阪湾,播磨灘,b: 備讃瀬戸,c: 燧・備後灘,安芸灘,伊予灘,周防灘東部域,d: 広島湾,周防灘西部域の4つの群にまとめられた。この群をなす区域にはそれぞれ特徴的ないくつかの代表種をもつホンダワラ科藻類の群集が存在することが認められた。(3)各区域毎に種相互の混生の程度を検討した結果,アカモク,ヨレモク,ホンダワラ,ヤツマタモク,ノコギリモクの5種は相互に混生しやすく,またヤツマタモク,ノコギリモク,イソモクの3種間,ネジモクとトゲモク,トゲモクとヨレモクの2種間でも相互の混生の割合が高いことが認められた。(4)検討結果を総合して,アカモク,ハハキモク,フシスジモク,ジョロモク,マメタワラは内湾的性格のより強い種,ネジモク,ナラサモ,トゲモク,タマナシモク,ツクシモク,ナンカイモク,コブクロモク,ヒユウガモク,ヘラモク,ヒジキ,ヤツマタモク,ノコギリモク,オオバノコギリモク,ヨレモク,オオバモク,イソモクは外洋的性格のより強い種であると考えられた。