著者
金丸 直義 高橋 清明 千葉 則茂 斎藤 伸自
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.41, pp.251-252, 1990-09-04

コンピュータグラフィクスにおける樹木の画像生成は,自然景観のシミュレーションにおいて重要な位置を占める.庭園や公園,街路樹の並木などの種々の建設計画のための景観シミュレーションや,へリコプタなどの低速低空飛行機用フライトシミュレータ用の景観シミュレーションにおいては,特にリアルな樹木の表現が期待される.リアルな樹木の表現には,自然な枝振りのシミュレーションが必要であり,そのためには遺伝的に定まる分枝パターンのみならず,生長環境での獲得形状のシミュレーションが重要となる.これまで,受光量不足による枝の枯死を考慮にいれ,自然な枝の分布密度を与える生長モデルがいくつか提案されているが,得られる樹形は枯死のない分枝による樹形の部分形状となっている.そのため,自然に見られるような,能動的に空間の分布を調整するように棲み分ける,あるいは光を求めて生長した軌跡のような枝振りは得られない.さらに,密集しながらも互いに枯死を避けるように,あたかも互いに交信し合うかのように,うまく空間へと広がりながら伸びる枝振りなどは分枝パターンや枝の枯死のみでは得られない,著者らは,これらの自然な枝振りは,前もってプログラムされた分枝パターンや樹木内の交信によるものよりも,生長点の向日性によるものが多いと考え検討を行ってきている.本報告では,生長点の向日性を考慮した生長モデルによれば,自重によらない自然な"枝垂れ"や枝の空間の棲み分けにより実現される"丸みを帯びた冠樹"の形成がうまくミュレーションできることをいくつかの例により示す.このよな試みは,安定して動作する堅固で使いやすい生長モデルの構築という工学的な観点に基づくことを断わっておく.