- 著者
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斎藤 道彦
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, pp.75-110, 2014-09-16
「尖閣」論をめぐって「尖閣=中国領」論を主張する二一世紀の「中国」エピゴーネン村田忠禧、大西広、孫崎享、矢吹晋らの著書を取り上げ、批判する。「尖閣=中国領」論の根幹は、尖閣が中国領であったことがあったのかどうかであるが、これらすべての論者は、中国が尖閣は中国領であったことの証拠としている明清史料の検討を満足に行なっていない。村田は、中国の議論を踏襲し、陳侃の『使琉球録』などが「古米山」(久米島)が琉球王国の領土であったとする記述を根拠として、久米島以西は中国領であり、従って尖閣諸島は中国領であると論ずるが、久米島以西は中国領なのかという議論を行なっていない。大西は、日清戦争や沖縄返還協定を取り上げ、国際法の通告義務などを論ずるが、肝心の尖閣は中国領であったことがあったのかという問題を検討していない。孫崎は,明清史料の名をいくつかあげているが、どれひとつ読んでいない。矢吹も、外務省は「棚上げ合意」の記録を削除したと主張するが、明清史料を検討していない。