著者
堀 正士 新井 哲明 嶋崎 素吉 鈴木 利人 白石 博康
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.97-99, 1997-01-15

trazodone(レスリン®,デジレル®)は,心血管系の副作用が軽微で,抗コリン系副作用が少ないことなどから,高齢者や身体疾患を合併したうつ病患者に対して比較的投与しやすい薬剤とされている2)。しかしその反面,副作用として稀ではあるが,持続陰茎勃起症が知られており,治療的緊急性を要する場合もあることから,男性患者では注意を要する7,9,10)。一方で,単に身体的な異常にとどまらず,性欲そのものを亢進させるという報告も近年みられるようになってきた4,6,8)が,その発現頻度は極めて低く,本邦での報告は見当たらない。今回我々はtrazodone投与中に耐え難い性欲の亢進を呈した,妄想性うつ病の1女性例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
著者
新井 哲明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.6, pp.494-498, 2007 (Released:2007-12-14)
参考文献数
34
被引用文献数
3 2

アルツハイマー病の症状は,中核症状である認知機能障害と,周辺症状である行動および心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)に大別される.中核症状に対しては,アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の有効性が確立しており,わが国で現在使用できるのは前者に属するドネペジルのみである.AChE阻害薬については,認知機能の改善あるいは安定化作用のほか,日常生活動作の維持,向精神薬使用頻度の低下,介護者負担の軽減,施設入所時期の遅延,費用対効果の低減,などの効果が報告されている.興奮,焦燥,幻覚,妄想などのBPSDに対する薬物療法としては,非定型抗精神病薬の有効性が確立しつつあったが,2005年米国食品医薬品管理局より死亡率の増加を指摘されたことから,その適応について議論が続いている.