著者
新井 馨
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-14, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
86

現代美術を美術教育へ取り入れた実践研究,あるいはその有用性や表現形式などの研究は数多くあるものの,目的とするところは多様である。そこで,本稿では現代美術の美術教育への取り入れに関する論文をとりあげ,研究の蓄積を整理し動向と課題を報告する。文献の収集方法と範囲は学術情報データベースCiniiによる検索を行い,対象年代は1958年から2017年とした。検索では「現代美術」「教育」をキーワードとして関連文献を収集した結果,100稿の論文が存在した。これらの論文を,年代別,対象者別,テーマ別に整理し課題を検討した。その結果,1.議論されるテーマに偏りがある,2.多くの実践や理論の対象に幼児・小学校の扱いが少ない,3.現代美術をどう取り入れどういった力が培われるかが明確でない,ことの3点が課題として明らかになった。
著者
新井 馨
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.17-24, 2017

<p>アール・ブリュットを基軸に現在の美術・美術史を改めて振り返ることで,芸術,美術をどのように捉えるのか,といった問いが浮かび上がる。そして,この問いは,美術教育が指す「美術」の捉え方にも繋がる問題であると考えられる。これまでの考察で,正規の美術史とは交わらないもう一つの「人間の造形」なる一群があることを示してきた。制度化した近代以降の「美術」は,造形物に「美術」「非美術」と想定することで,「美術」なる概念の定まり方をつくってきた。交わることのなかった並行する二つの線は,「美術」が「人間の造形」を取り入れ「美術」としたことで,「美術」そのものの矛盾と乖離が生まれたのである。本論では,これまでの成果を踏まえ,アール・ブリュットを通して,制度としての「美術」を総合的・俯瞰的に考察を深めたものである。そして,これは美術教育が考えるべき問題と同根のものである,との考えのもと考察を進めている。</p>