著者
新保 健介
出版者
仙台市立金剛沢小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

【研究目的】社会的事象間の関連を説明するには,社会的事象への仮説立てと検証が不可欠である。折しも平成23年度から,新学習指導要領が完全実施された。その要諦は「言語活動」である。社会科における言語活動は,収集した情報を比較・関連づけ・総合しながら再構成すること。考えたことを伝えて互いに深め合うこととしている。しかし,仮説無きままの児童による言語活動では効果はありえない。そこで(1)地図統計等資料の比較によって仮説立てや検証を行えるよう支援する。(2)確かな仮説立てや検証のための話し合い・討論等の言語活動を行い,コミュニケーションの中で理解を確立する。以上二点を踏まえた授業開発が本研究の目的である。【研究方法】・比較により児童の積極的な仮説立てを促す資料の収集児童が資料比較活動によって仮説を自ら立てられるようにした。そのために児童が仮説を立てやすい資料を〓〓く収集した。映像資料や画像資料の取材にあたって,高解像度デジタルカメラやビデオカメラを活用した。また授業において児童が資料を比較する上で視覚効果を高めた。・児童が社会的事象を総合的に捉えることができる言語活動案の作成授業における言語活動には(1)資料比較による仮説立て(2)仮説の検証という二段階を含ませた。具体的にはKJ法を用いて児童同士が互いの考えを伝え合い深める活動やイメージマップを活用して互いの考えを練り上げていく活動をとり入れた。授業内容はデジタルビデオカメラで撮影し,検証した。授業後には児童へアンケートを行い結果を検証した。・言語活動の位置づけと効果的指導過程の策定小学校社会科教科書の解説書をもとにカリキュラムを分析し,言語活動の活用手順を盛り込んだ指導計画ならびに指導案を作成した。【研究成果】研究の結果,資料比較活動によって児童が仮説を立てやすくなることが分かった。調査によって,全99名の児童からの結果により,資料提示によって仮説を立てやすくなった(96.9%)という結果を得た。また児童のノート記述から資料から事実と予想がはっきり記述されていた。そこで予想の検証という次の段階へつながりやすくなり、イメージマップ活用による検証を目的とした言語活動が明確な意義を持って行われた。社会科での仮説立てと検証を盛り込んだ授業が、目的が明確な言語活動づくりにつながったと考える。