著者
新保 健次 清水 啓史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】上腕骨近位端骨折の保存療法はその自動運動が行われるまでほぼ8週を要し、その点で日常生活活動(以下ADL)の改善について大きな負担になっていると考えられる。しかし、上腕骨近位端骨折の保存療法例に関するADL獲得時期についての詳細な報告は少ない。そこで、今回受傷後2、3ヶ月のADLについて調査したので報告する。<BR>【方法】可能な限り詳細にそのADLを調査するために40項目(身辺動作6、更衣7、入浴4、整容6、トイレ動作1、支持4、挙上2、筋力2、生活関連動作8)を独自に作成し、各項目を「できる」、「少しできる」、「できにくい」、「全くできない」の4段階で評価した(以下、「できる」、「少しできる」をできる群とする)。動作時痛をVisual Analog Scale(以下VAS)で評価した。上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に直接アンケート記入を依頼し、受傷後2、3ヶ月の計2回実施した。対象は全例女性で、受傷時年齢は60.8歳(43歳~79歳)であった。Neer分類による骨折型はminimal displacement骨折が3例、2part外科頚骨折が2例、3part外科頚、大結節骨折が1例であった。<BR>【結果】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数は全例で増加した。1例が30項目(75%)であり、他5例は35~40項目(87.5%~100%)であった。VASは平均48.8mmから14.3mmであり全例で改善した。受傷後3ヶ月で全例が改善した動作は、「更衣動作」、「反対側の脇、肩を洗う」、「ズボンの後ろポケットに手をいれる」、「起きる際に患肢を支えにする」、「目の高さより上の物をとる」、「前の物に手を伸ばす」、「重い物を下げる」であった。改善が低かった動作は「ブラジャーを後ろで留める」、「エプロンのひもを後ろで結ぶ」、「背中を洗う」、「結髪動作」、「ネックレスを後ろで留める」、「患側を下にして寝る」、「手枕をする」、「重い物を目の高さまで挙げる」、「洗濯物を干す」、「自転車に乗る」であった。<BR>【考察】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数が増加したこと、VASが改善したことから、ADL拡大に動作時痛の軽減は一つの要素になっていると考えた。他より改善が低かった1例は3part骨折で、75歳以上の高齢者であった。ADLで改善された群から、肩関節部に大きな力が加わると考えられる「目の高さより上の物をとる」、「重い物を下げる」など問題はなかった。しかし、上腕骨に回旋の加わる動作は改善が低い傾向があった。固定期間中に制限される動作に改善が低い傾向があると考えられた。上腕骨近位端骨折の保存療法に影響を及ぼす因子については骨折型、年齢が影響するとの報告がある。後療法では各症例のゴールを踏まえ、機能改善だけでなく骨折型や骨癒合の状態を確認する、できない動作に代償動作の指導を行うなどの必要があると考えられた。<BR>【まとめ】上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に受傷後2、3ケ月のADLに関するアンケート調査を行った。全例で受傷後2~3ヶ月でADLの改善が見られた。
著者
新保 健次 清水 啓史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0563, 2008

【目的】上腕骨近位端骨折の保存療法はその自動運動が行われるまでほぼ8週を要し、その点で日常生活活動(以下ADL)の改善について大きな負担になっていると考えられる。しかし、上腕骨近位端骨折の保存療法例に関するADL獲得時期についての詳細な報告は少ない。そこで、今回受傷後2、3ヶ月のADLについて調査したので報告する。<BR>【方法】可能な限り詳細にそのADLを調査するために40項目(身辺動作6、更衣7、入浴4、整容6、トイレ動作1、支持4、挙上2、筋力2、生活関連動作8)を独自に作成し、各項目を「できる」、「少しできる」、「できにくい」、「全くできない」の4段階で評価した(以下、「できる」、「少しできる」をできる群とする)。動作時痛をVisual Analog Scale(以下VAS)で評価した。上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に直接アンケート記入を依頼し、受傷後2、3ヶ月の計2回実施した。対象は全例女性で、受傷時年齢は60.8歳(43歳~79歳)であった。Neer分類による骨折型はminimal displacement骨折が3例、2part外科頚骨折が2例、3part外科頚、大結節骨折が1例であった。<BR>【結果】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数は全例で増加した。1例が30項目(75%)であり、他5例は35~40項目(87.5%~100%)であった。VASは平均48.8mmから14.3mmであり全例で改善した。受傷後3ヶ月で全例が改善した動作は、「更衣動作」、「反対側の脇、肩を洗う」、「ズボンの後ろポケットに手をいれる」、「起きる際に患肢を支えにする」、「目の高さより上の物をとる」、「前の物に手を伸ばす」、「重い物を下げる」であった。改善が低かった動作は「ブラジャーを後ろで留める」、「エプロンのひもを後ろで結ぶ」、「背中を洗う」、「結髪動作」、「ネックレスを後ろで留める」、「患側を下にして寝る」、「手枕をする」、「重い物を目の高さまで挙げる」、「洗濯物を干す」、「自転車に乗る」であった。<BR>【考察】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数が増加したこと、VASが改善したことから、ADL拡大に動作時痛の軽減は一つの要素になっていると考えた。他より改善が低かった1例は3part骨折で、75歳以上の高齢者であった。ADLで改善された群から、肩関節部に大きな力が加わると考えられる「目の高さより上の物をとる」、「重い物を下げる」など問題はなかった。しかし、上腕骨に回旋の加わる動作は改善が低い傾向があった。固定期間中に制限される動作に改善が低い傾向があると考えられた。上腕骨近位端骨折の保存療法に影響を及ぼす因子については骨折型、年齢が影響するとの報告がある。後療法では各症例のゴールを踏まえ、機能改善だけでなく骨折型や骨癒合の状態を確認する、できない動作に代償動作の指導を行うなどの必要があると考えられた。<BR>【まとめ】上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に受傷後2、3ケ月のADLに関するアンケート調査を行った。全例で受傷後2~3ヶ月でADLの改善が見られた。